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ペット豆知識・号外-第3弾・あなたのペット知識度・その2-

●猫エイズワクチンの接種を受けたいのですが?
 アメリカ合衆国では6年前に製品化されていた猫エイズワクチンが、オーストラリアに次いで今年より日本でも接種が受けられるようになりました。接種に先立っての簡単な注意事項について記します。
 ①8週齢(生後2ヶ月)以上の猫に接種可能である。②初めて接種する場合には2~3週間間隔で計3回皮下注射する。③追加注射は最後の注射から1年以上の間隔をあけて1回皮下注射する。④猫エイズワクチンと他のワクチン(3種混合、4種混合、5種混合など)との同時投与は避けなければならない。生ワクチンは1ヶ月以上、不活化ワクチンは1週間以上の間隔をあけてからエイズワクチンを注射することが必要。なお、エイズワクチン注射後に他のワクチンを投与する場合には、1週間以上の間隔をあけなければならない。⑤副作用として線維肉腫(1/1000~1/10000の確率)などの発癌性や、発熱・疼痛・下痢・嘔吐などの見られる場合がある。また過敏体質の猫では、まれにアレルギー反応(顔面腫脹=ムーンフェイス、掻痒、蕁麻疹など)又はアナフィラキシー・ショックが起こることがある。その他注射部位に腫脹や硬結が見られる場合がある。・・・などです。
 ワクチン注射の対象となる猫は、①外に出る猫、②2頭以上の多頭飼育で、外に出る可能性のある猫がいる場合、③多頭飼育で、既に1頭以上のエイズ感染猫がいる場合、などです。※既にエイズに感染している猫にはワクチンは無効です。
 本ワクチンは、猫白血病ワクチンが予防に多大の貢献をもたらしたように、多くの猫が恩恵をこうむることに疑念はないと考えます。猫エイズの恐怖に曝されている飼い主の方、エイズワクチンと他の混合ワクチンとの接種時期や間隔などは個別に接種計画をたてる必要があります。詳しくは、受付まで御相談下さい。
 注:ワクチンによる抗体価の上昇でエイズ検査が陽性となります。個体の識別に加えてエイズワクチン接種既往の管理(有無)のためにも、前出のマイクロチップの使用が望ましいと思われます。(Dr.田原)

 
●犬、猫の鎮痛剤は人とどう違うの?-ペットのペイン・コントロール-
 ヒポクラテス(古代ギリシャの医師、前460頃~前375頃)の時代、ヤナギの木には解熱・鎮痛作用のあることが知られていました。19世紀にはヤナギの木からサリチル酸が分離され、1897年ドイツのバイエル社のフェリックス・ホフマンにより、胃腸障害を弱めた世界初の人工合成医薬品である「アスピリン」(アセチルサリチル酸=Acetylsalicylic acid)が開発されました。
 アスピリンは解熱・鎮痛作用のほかに抗血栓作用(血小板凝集抑制作用)があることから、欧米では「神がくれた薬」として、大衆化し、最も名のある薬品です。
 そもそも痛みとはいかなるメカニズムで発生するのでしょうか。やや専門的ですが、鎮痛剤はわれわれの病気の治療としても、特に関節炎や○○肩などでよく処方される薬ですので、お付き合い下さい。外傷や手術などで細胞に損傷が起こると、アラキドン酸が遊離されシクロオキシゲナーゼ(COX-1、COX-2)およびリポキシゲナーゼの酵素作用で炎症の重要なメディエーターであるプロスタグランジンやトロンボキサン、ロイコトリエンを産生します。多くの非ステロイド性(系)抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)はこれらの酵素を阻害して炎症誘起物質の産生を抑制することで、鎮痛作用を発現します。しかしながら、鎮痛剤には胃潰瘍や消化管出血などの重大な副作用が存在します。ここで重要なのはCOX-1とCOX-2の存在で、前者の生理作用は胃粘膜においてプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を促し胃壁の防御作用に関与しています。反対に後者の生理作用は炎症を惹起し痛みを生み出します。従って、同じプロスタグランジンの仲間でもその産生阻害は生体にとってよい場合もあればその逆もあるということです。現時点でのNSAIDsの理想はCOX-1を抑制(阻害)せずに、選択的にCOX-2を阻害することが望ましいことになります。この観点から、多くの薬が開発され現在に至っていますが、理想には届かず、実際にはH2ブロッカーやスクラルファートなどの胃薬が併用されています。
 さて、わが国での犬・猫の鎮痛剤事情はどうでしょうか。関節炎や骨関節症、術前・術後の鎮痛、癌性疼痛の緩和療法など、ヒトのペイン・コントロールの概念に準じてその投与が推奨される傾向にあり、数種の製品が承認され販売されています。しかし、国によって統一性が無く、認可された薬や動物種もまちまちといったところです。薬によっは癌組織や損傷部位からの生命にかかわる程の大量出血を起こす場合もあり、投与に慎重を要することもしばしばです。鎮痛作用がアスピリンの約200倍もある薬も登場していますが、使用に当たっては獣医師とのインフォームド・コンセントが十分になされた上での服用(投薬)が望まれます。
 ここでは主にNSAIDsについて記しましたが、その他、麻酔のメカニズムなどで鎮痛作用を有する薬も多数あります。参考までに列挙しておきます。①α2作働薬(犬猫では鎮静剤として主麻酔の前投薬として使用され、拮抗薬も存在)、②抗不安薬(トランキライザー)、③糖質コルチコイド(消炎作用)、④局所(=local)麻酔剤(キシロカイン、ブピバカイン、メピバカイン)、⑤ケタミンなどのNMDA受容体拮抗薬、⑥オピオイド(=Opioids、モルヒネなどの麻薬性鎮痛剤)、⑦表面麻酔(=topical、皮膚表面や生殖器、カテーテル留置時などに使用)、⑧三環系抗抑鬱剤、⑨その他(ブトルファノール、トラマドールなどの非麻薬性鎮痛剤。ガバペンチンなど)等々多様で、頻用される薬も多々あるのが現状です。
 実際の診療では症例ごとに上記の薬を単独あるいは併用しています。
※注:痛みの発生メカニズムはここで述べた以外に多様ですので、悪しからず。(Dr.田原)

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