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ペット豆知識No.48-救急疾患5、年末・冬季に多い疾患-MRT-「ペット・ラジオ診察室」11月26日放送分

 早いもので、あと数日もすれば師走に突入する。自身はそのように思わなくも、周りの忙しなさに巻き込まれがちである。そこで、今回は「年末・冬に多い事故と疾患」について触れてみる。

1.交通事故
 不思議なことに、同じ病気が続けて来院することは珍しくない。年末にかけて気温が低下すると、散歩が面倒臭くなり、リードを付けずに庭先で離すとか、散歩の中途でリードを外したりとか、・・・によって交通事故に遭遇する事例が増える。既にこの2週間、5~6例の犬・猫が交通事故で夜間救急に運び込まれている。年末が近づくにつれ、その慌ただしさから、ペットの管理が疎(おろそ)かになりがちである。

2.伝染病
 ヒトの新型インフルエンザが冬季に拡大するように、犬・猫のウイルス病も寒い時期に流行する。これはウイルスが低温と乾燥に強いという性質からである。今年は犬のパルボウイルス感染症が夏場に小流行したが、さらに感染の拡大する懸念がある。犬パルボウイルスは猫にも感染する。猫ではネコ風邪と言われる猫伝染性鼻気管炎(ヘルペスウイルスでFVRという)とネコインフルエンザと称される猫カリシウイルス感染症(FCV)がある。鼻風邪、咽喉(のど)風邪が、気管支肺炎に進行し、救急で来院することも少なくない。どのウイルスにもワクチンが有効である。

3.猫の下部尿路疾患(FLUTD)
 下部尿路とは膀胱と尿道を指す。FLUTDはこの部位での病気を総称するが、突発性膀胱炎や細菌性膀胱炎、尿道炎、結石症、血尿などの原因で起こる。特に尿道にプラグ(栓子)が詰まる事に因って起こる。栓子には膀胱炎による炎症産物や結石、砂粒などがある。尿道炎で尿道が狭窄している場合には、さらに起こり易くなる。冬季にFLUTDが多い要因は、外出や行動の低下で飲水量が減少し、それによって尿量と排尿回数が減ることによる。排尿回数の減少は膀胱内での結石の生成を助長し、また膀胱炎発症のリスクを高める。雌猫にも発症しない事はないが、ほとんどが雄猫である。雄猫は犬や人に比べ体重の割に尿道が狭く(詰まり易い)短い(細菌性膀胱炎に罹患し易い)ことがリスクをさらに高めている。去勢手術を7か月齢以後に実施するのはそのためである。
特発性膀胱炎は猫で多く見られるが、原因不明の疾患である。血尿で来院する猫の約半分が本症と考えられている

4.犬の子宮蓄膿症
 雌犬の発情は約8割が年2回、年1回と2年に3回がそれぞれ1割程度と考えられる。原因は不明だが、外見上発情の来ないケースも最近増えているように思われる。犬の発情メカニズムの詳細については解明に至ってない点も少なくないが、その時期が春と秋に多いことから、日照時間との関連性が指摘されてきた。雌犬に子宮蓄膿症が多発する原因は、発情期間中に子宮頸管から子宮内への細菌の侵入による。老齢などの因子が加わると、感染が成立し、子宮内膜炎や子宮蓄膿症へと発展して、発症する。症状は発熱、多飲多尿、食欲低下、元気消失、腹囲膨満、外陰部からの膿排泄、ブドウ膜炎などである。発症の時期は発情終了後2週間~2カ月が多いので、この間は特に注意を要する。未避妊雌が生存中、子宮蓄膿症に罹患する確率は約60%と考えられてきたが、現在では約80%に上昇している。乳腺腫瘍(癌)のリスクを考慮しても、早期の避妊手術の実施が望まれる。

 これからの年末・年始、家族の一員であるペットが病気で大事に至ることの無いよう、健康管理や全身状態のチェックを怠らないことが重要である

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