年末年始の連休期間中、愛犬・愛猫はどのように過ごしているでしょうか?人が集まりにぎやかに過ぎていく年末・年始は犬や猫の病気も多くなります。今回のテーマは「年末・年始に多い病気」についてです。この時期は人の生活リズムが変化することにより、ペットの病気を誘引することが多いため、しっかりと注意しておきましょう。
●まずは下痢・嘔吐である。以前述べているように、食生活の変化やストレスにより悪玉菌が増殖し、下痢や嘔吐を引き起こすことが多い。具体的には、実家への里帰りや旅行中におせち料理などをパクリ、お父さんのおつまみをパクリ、お孫さんのおかしをパクリ・・・・・といった具合に、普段食べなれないものを多量に口にしていまう。また、長時間のドライブ、慣れないケージでの移動、子供に追いかけ回される・・・・・などといったストレスも多い。人は悪気は無いのだが、犬にとってはストレスにしかならない事が多い。
●下痢・嘔吐にとどまらず、異物を摂取し腸閉塞を引き起こすことも多い。特に犬(犬の中でも、ミニチュア・ダックス、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーなどは要注意!!)では、妻楊枝、竹串、木の実、梅の種、子供のおもちゃ、薬・・・・・といった物を一瞬のうちに飲み込む。親戚への挨拶、墓参り、バーゲンなどで家を空ける機会が多いのも年末・年始の特徴であり、留守中や少し目を離した隙に、これらの異物を摂食されないよう、十分注意したい。異物を摂取し、時間が経過すると、異物が胃内から小腸内へ流れ込み、腸閉塞を引き起こしたり、腸を突き破る(腸管穿孔という)ことがある。そうなると手術をせざるを得ない。「死」に直結した緊急事態である。楽しい正月休みが一転。真っ青ものだ。万が一摂取してしまった場合には、摂取した物が胃内にある間ならば催吐処置や内視鏡で、腸切開を免れることができる。一番良いのは食べないことだが、食べてしまった場合には早急に病院に連れて行く。
●ストレスや食生活の変化に関連して、心臓病が悪化し、肺水腫を引き起こすことも多い。これも以前に述べているのだが、特に小型犬では僧帽弁閉鎖不全症という病気が多い。病院で本症が診断され、投薬中の場合には特に要注意である。ストレスや興奮、塩分や水分の過剰摂取により、突如、肺水腫を呈する。僧帽弁という弁は細い紐のような腱索で(乳頭筋と)つながっているのだが、その腱索が犬の急な興奮や運動などにより、心臓の拍動がその限界を超え、断裂することがある(腱索断裂)。そうなると、一気に病状は悪化し、肺水腫に陥り、短時間で死に至ることも少なくない。
●最後は交通事故などの「外傷」である。飼い主の気のゆるみ、普段とは違う人が散歩させる、普段とは違う散歩コース、脱走といったことなどにより、交通事故も多い。その他、犬同士のケンカによる咬傷も多々あり、中には小型犬に中型犬が飛び乗ることにより、頸部を圧迫・損傷し、即死したケースもある。実家の犬と会わせるといった、慣れない犬同士の接触は避けたい。
私ごとで恐縮ですが、大晦日の午前の診療が終わって、3泊4日の正月休暇を頂き、愛犬の「アホロ」(トイ・プードル)と捨て小犬の「コロ助」を連れ、空路と新幹線で帰省しました。もちろん、細心の注意を払いましたが、砕身の旅でもありました。今年も、「ペット豆知識」の御購読と、MRT放送「ペット・ラジオ診察室」の御傾聴の程、宜しくお願いします。
文責 獣医師 棚多 瞳