今回はワクチンのアレルギー反応について考えてみよう。
●原因:ワクチン製造時の培養細胞、培地に含まれる異種タンパク、ゼラチンやカゼインなどのワクチン安定剤、アジュバンドなどが抗原となる。
●アレルギー反応は大別して4つのタイプがある。ワクチンのアレルギー反応は主にⅠ型が関連している。以下に4つの型についてまとめてみる。
●Ⅰ型:抗原に感作されるとIgE抗体が産生され、肥満細胞や好塩基球に結合する。結合したIgEに抗原が反応すると、ヒスタミンやロイコトリエンの放出を起こす。疾患としては、気管支喘息、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシーショックなどがある。
●Ⅱ型:細胞障害型アレルギーとも呼ばれ、細胞や組織に対する自己抗体もしくは血液型抗原に対する抗体(IgG、IgM)、あるいは組織に付着した物質に対する抗体が、抗原と作用して生ずる組織障害。補体および好中球も関与する。疾患としては、重症筋無力症、輸血反応、新生児溶血性黄疸などがある。
●Ⅲ型:免疫複合型アレルギーとも呼ばれ、IgGまたはIgMが抗原と反応し免疫複合体を作ることで生ずる組織障害。補体や好中球なども関与する。疾患としては、糸球体腎炎、慢性関節リウマチが代表的。
●Ⅳ型:細胞障害型T細胞と抗原との反応によって生じる。T細胞による直接的な組織障害と炎症を伴う。抗体が関与しない細胞性免疫である。移植片対宿主反応が代表。
●ワクチンによるアレルギー反応の種類には、即時型反応と非即時型反応(遅延型反応)の2つがある。即時型反応の特徴は、①ワクチン接種後60分以内に発現、②呼吸器・循環器症状として、気管支平滑筋の収縮や浮腫などで呼吸困難やチアノーゼ、血管平滑筋の拡張・心筋収縮力の低下・徐脈などで循環虚脱(低血圧性ショック)を起こし、③皮膚症状も同時にみることあり。一方の遅延型反応は、①ワクチン接種後から1~24時間で、あるいはそれ以上で発現し、②顔面腫脹・蕁麻疹・発熱などを呈する。
●ワクチンアレルギーの発現頻度:英国と米国、それに日本でその発現頻度は大きく異なっている。抗原となる物質や濃度、製造メーカーに原因するのであろう。わが国の犬混合ワクチンについては、アナフィラキシーショックが約2万頭に1頭、顔面腫脹などの皮膚症状が400~500頭に1頭、発熱が約100頭に1頭程度の発現と考えられる。猫に関しては、20頭に1頭の割合で発熱が見られるものの、アナフィラキシーショックに関しては犬よりも稀と思われる。
●ワクチン接種時の注意点と問題点:前回引用した文献で、85頭中16頭が1回目のワクチンでアレルギー反応を起こしている。これは、生後ワクチン接種までに食餌などで何らかの抗原に曝されてたことを意味している。初回のワクチンでも安心してはならない。ワクチン接種後は最低15分間、出来れば30分間は院内あるいは駐車場内で動物の観察を怠らず、異常が起これば早急な処置(酸素吸入・ステロイド・輸液・昇圧剤など)を施す。その後も2~3時間は要観察で、24時間は要注意である。勿論、体調に異常がある場合のワクチン接種は避ける。
●帰宅後も、異常を感じたら、直ぐ病院へ電話!!!