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ペット豆知識No.71-猫汎白血球減少症-MRT「ペット・ラジオ診察室」5月6日放送分

今回は現在、宮崎市で「猫汎白血球減少症」という伝染病が大流行しているため、犬種別に多い疾患シリーズはお休みする。

 ●猫汎白血球減少症とは、腸炎(嘔吐・下痢)と白血球減少が特徴の疾患で高い死亡率となる。

 ●パルボウイルスというウイルスが原因で、活発に分裂している細胞に親和性があるため、リンパ組織、骨髄、腸粘膜上皮が標的となり、腸炎や白血球減少といった症状を引き起こす。

 ●この疾患の潜伏期は4~6日である。
 重症度は無症状~突然死まで様々で、子猫ほど重症化しやすい。具体的な症状は嘔吐・下痢の他、発熱、食欲不振などが認められる。妊娠中の猫が感染した場合、妊娠胎仔が死亡することがある。
 また、子猫(生後約3週間以内)や胎仔が感染した場合、小脳形成不全が生じ、生存しても運動失調といった麻痺が一生残ることがある。

 ●診断は糞便中のウイルス抗原を検出するキットがあるため、病院で迅速に診断できる。

 ●治療は点滴(脱水や電解質異常を防ぐ)、抗生剤の投与(二次感染を防ぐ)、食事を控える(嘔吐・下痢の予防、腸細胞の分裂を抑制)、インターフェロンの投与などにより行うが、治療の甲斐なく亡くなってしまう場合も少なくない

 ●パルボウイルスは主に糞便中に排泄され、ウイルスが糞便中に排泄される期間は比較的短いが、排泄されたウイルスは環境中で半年以上も生存する。感染動物との直接接触はもちろん、その動物の食器やベット、その動物に触れた人の衣服や靴などに存在するウイルスによっても感染する。ウイルスは経口・経鼻により簡単に感染する。

 ●他の動物への感染を防ぐためには、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤に含まれる)、ホルマリン、煮沸は有効だが、アルコールは無効である。次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は室温で10分以上の時間を要する。

 ●そして、予防として最も大切なのはワクチンである。より確実に抗体産生を促すためには、初回接種の場合は3~4週間間隔での2回接種が望まれる。ワクチン接種後、1~2週間(初回接種で2週間、2回目は3~7日)で抗体が産生される

★★パルボウイルスにはいくつかの抗原型(FPLV,CPV-2,CPV-2a,CPV-2b,CPV-2c)があり、抗原型によっては犬猫ともに感染する型がある。そのため、愛犬にも注意が必要である。
 ちなみに、最近来院したパルボウイルス陽性の子猫2匹において抗原型を調べたところ、CPV-2b(犬猫ともに感染する抗原型)であることが分かった。

★★猫汎白血球減少症は容易に感染し、重度の場合には死亡する可能性のある疾患である。家のみで飼っている場合でも人がウイルスを運んでくる危険性があるため、後悔する前に確実なワクチン接種が望まれる。

文責:獣医師 棚多 瞳 

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