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ペット豆知識No.76-猫の肝リピドーシス-MRT「ペット・ラジオ診察室」6月10日放送分

今回は猫でみられる「肝リピドーシス」について述べる。
 
●肝リピドーシスとは?
 さまざまな原因により脂質代謝が障害され、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する病気のことである。

●正常では肝臓の脂肪はどのようにコントロールされているのだろうか?
 肝臓の脂肪は、食事中の脂肪、脂肪組織からの脂肪、肝臓で合成された脂肪に大別され、肝臓でエネルギーとして用いられない余分な脂肪はVLDL(超低比重リポ蛋白質)として末梢(脂肪組織)に運ばれる。正常な肝臓の脂肪含量は肝臓の総重量の5%である。
 
●具体的にはどのような原因で生じるのか?
 人では酵素やその他の蛋白質が欠損するために脂質が蓄積するが、猫で重要な原因は食欲不振(通常2週間以上だが、場合によっては数日。)である。食欲不振が続いた場合、脂肪組織における脂肪分解が促進される。肝臓での過剰な脂肪は通常、VLDLとして末梢に運ばれるが、食欲不振により蛋白質が十分に摂取できない状態ではVLDLが合成されず、末梢への脂肪の運搬が障害される。

※また、猫は肝臓にグルカゴンを少量しか蓄えることができず、食欲不振による脂肪分解や肝臓への脂肪の蓄積が急速に生じる。

●どのような症状が見られるのか?
 急激な体重減少、食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢、便秘、黄疸などが見られる。

●治療は?
 食欲不振による肝リピドーシスの治療は、食欲不振を引き起こした基礎疾患に対する治療はもちろんだが、大切なのは食物の強制給餌である。この食物には良質な蛋白質が必要で、少なくとも全摂取カロリーの20%が蛋白質で構成されていなければならない。また、炭水化物の多い食事は脂肪酸の酸化(エネルギーとして使用)を阻害し、肝リピドーシスを悪化させる。そのため、高タンパクの猫用の食事を与える(40~60kcal/kg)。

●大切なのは予防すること。
 肝リピドーシスは死に至ることも多い疾患である。大切なのは「予防」である。肥満度に比例して脂肪組織から放出される脂肪酸は増加し、これらの1/3は肝臓に取り込まれる。当然、肝リピドーシスのリスクは増加する。
 原因は何であれ、猫の絶食は肝リピドーシス危険を伴う。ダイエットを行う、急な環境の変化などの際にも気をつけたい。

 

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