「今日のワンコ」は5歳・雄のマルチーズのダイ君。このところの発咳で来院。胸部レントゲン撮影で肺炎像を認める。血液検査では白血球数が46,300(正常は10,000~15,000)と著増しており、中でも好酸球の増加が正常の数%から約30%に増加していた。好酸球の著増に注目し、アレルギー性疾患を疑ったが、胸部レントゲン以外に異常を検出できなかったため、アレルギー性肺炎を疑いアレルギー検査(血中IgE抗体)を実施した。その結果、症状に関連あるものとして煙草の煙が陽性を示したため、家族の室内での喫煙を止めて貰い、かつステロイド剤の内服を指示した。症例は、1ヶ月半後には症状、レントゲン所見、白血球数と好酸球数とも正常に改善され完治した。
「煙草の煙」は眼に浸みる、だけではありませぬ。ペットにも病害がありまする。愛煙家の皆様、どうぞ煙草は換気扇の下か屋外で吸って下され。ペットに代っての願いじゃ!
<今日のラジオ診察>
猛威をふるうパルボウイルス感染症。「昔の犬パルボウイルスはCPV-2といわれる型のもので、1987年頃まではCPV-2aやCPV-2bが蔓延した。それから1987年~1997年頃までは新しい型のnew CPV-2aが、1997年~2006年まではnew CPV-2bが野外での流行株であった。」ことが調査・研究されている。今回、パルボウイルス感染症(汎白血球減少症)と診断した猫から採取した糞便について、その型を調べたところ、犬のnew CPV-2bが検出された。現在日本では、①猫のパルボウイルスの型を検査するラボ(検査機関)はないこと、②犬パルボウイルスの型は検査可能なこと、③パルボウイルスは犬と猫の間で互いに伝播することが指摘されている等の理由から、パルボウイルス感染猫の糞便について犬パルボウイルスの型の照合を実施したものだ。この型が本来犬由来であったものか、あるいは猫由来でもあるのかは、猫での検査ができる状況でないため、断言できるものではない。しかし、犬のパルボウイルスが猫にも伝染することを強く示唆している結果である。また、感染猫から逆に犬への伝染も十分に有り得るという結論が得られる。
パルボウイルスは変異し易いウイルスの一つである。今回流行しているウイルスは病原性の強いウイルスと考えらる。そして犬、猫ともに感染しうる株の可能性が強い。毎年のワクチン接種が済んでいない場合にはすぐに病院へ!!!