<犬猫の免疫介在性溶血性貧血>
1.犬の溶血性貧血の原因
①遺伝性(ピルビン酸キナーぜ酵素欠乏・フォスフォフルクトキナーぜ欠乏)
②毒素(たまねぎ、亜鉛、銅)
③犬バベシア症、犬ヘモバルトネーラ症
④最近のワクチン接種
⑤薬物反応(セファロスポリン系、ペニシリン系、サルファ剤、非ステロイド系消炎剤、レバミゾール、ビタミンK3)
⑥新生物(造血性腫瘍、血管肉腫、組織球性腫瘍)
⑦脾臓の捻転
⑧低リン酸塩血症
⑨蜂毒
⑩微小血管障害(DIC=播種性血管内凝固症候群、急性フィラリア症)
⑪特発性の免疫介在性溶血性貧血
2.猫の溶血性貧血の原因
①遺伝性(ピルビン酸キナーぜ欠乏・アビシニアン、ソマリ)
②猫白血病ウイルス、猫エイズウイルス
③猫ヘモバルトネーラ症(Mycoplasma hemofelis、Mycoplasma haemiminutum)
④中毒(亜鉛、銅、たまねぎ、メチレンブルー、アセトアミノフェン、D-L-メチオニン、ベンゾカイン、プロピレングリコール)
⑤薬物反応(プロピールチオウラシル、他)
⑥不適合輸血
⑦新生仔溶血
⑧新生物(血管肉腫、組織球性腫瘍)
⑨低リン酸塩血症
⑩微小血管障害(DIC)
⑪特発性の免疫介在性溶血性貧血
3.特発性免疫介在性溶血性貧血の臨床
●本症(IMHA=Immune-Mediated Hemolytic Anemia)の原因は特定されていない。しかし、コッカー・スパニエルやプードル、イングリッシュ・シープ・ドッグのような犬種で高い発生率であることから、遺伝的な要因が考えられている。発生率の高い特殊な遺伝子を持つ動物では、ワクチン接種やストレス、感染症などがIMHAの引き金となる。※※文献ではこのように書かれているが、実際は、日本犬や雑種犬の発症は少なく、洋犬の純血種に多発するようである。
●原因:いまだに不明な疾患である。何らかの原因で自己の赤血球の膜に対して抗体が産生され、その抗体と赤血球膜が抗原抗体反応を起こして、結果として赤血球が溶血する。
●診断:犬も猫もIMHAであることを確定するには、上に示したあらゆる溶血性貧血の原因となる疾患をルール・アウト(鑑別診断)する必要がある。免疫学的検査であるクームステストで抗体の有無を調べる。しかし、臨床的には血液塗抹で球状赤血球を見いだせば本症とほぼ確定できる。
●症状:溶血に伴う赤血球減少と破壊された赤血球処理の能力オーバーに因る症状が主に発現する。元気消失、虚脱、歯肉の蒼白・黄色化(黄疸)、変色尿、発熱、収縮期心雑音(貧血に起因)、肝臓・脾臓の腫大(赤血球の貪食)、頻脈、頻呼吸など。
●治療:酸素吸入輸液。貧血が重度であれば輸血。基本はステロイド剤を主とした免疫抑制療法。
●予後:死亡率は20%~75%と報告で異なるが、治療に反応が見られない症例も少なくないため、死亡率は高い。