●血小板の機能は止血作用で、正常値は20万/μL以上。5万/μL以下に減少すると、出血傾向が見られ、通常手術は実施できない。
●<犬猫の血小板減少症の原因>
①脾臓での隔離(脾臓の新生物、捻転、血腫、血栓症/梗塞)
②薬物(細胞毒素性、抗生物質、エストロジェン、非ステロイド系消炎剤、アルベンダゾール、グリセオフルビン、プロピールチオウラシル、ケトコナゾール、他)
③新生物(造血性腫瘍、組織球性腫瘍、血管肉腫)
④感染症(Ehrlichia canis、E.ewingii、E.chafeensis、Anaplasma phagocytophila、A.platys、Rickettsia rickettsii、parvovirus、distemper、猫白血病ウイルス、猫エイズウイルス、cytauxzoonsis、全身性真菌(糸状菌)症、レプトスピラ症、犬バベシア症、敗血症、エンドトキシン)
⑤骨髄疾患(骨髄線維症、骨髄異形成、骨髄壊死、myelophthesis)
⑥最近のワクチン接種
⑦脈管炎
⑧DIC(播種性血管内凝固症候群)/全身性の血栓症(胸腔、腹腔、末梢性)
⑨溶血性尿毒症
⑩重度の出血(抗凝固性の殺鼠剤、外傷)
⑪特発性の免疫介在性血小板減少症
<特発性免疫介在性血小板減少症>
●原因:不明だが、前回の特発性自己免疫性溶血性貧血症と同じメカニズムで起こる疾患であるが、本症の場合は、赤血球ではなく血小板に対して自己抗体が産生される。
●症状:皮膚や皮下の点状出血。粘膜出血。その他の点では外見上健康である。その他重症例では、口腔内粘膜出血・血尿・血腫・鼻出血・血便・血腹・・・・・眼底出血など。
●診断:上記の血小板減少を惹き起こす疾患を鑑別診断する。血小板数が25,000/μL以下。(感染症と違って)発熱がない。他の全身症状がない。
●治療:他の免疫疾患と同様に免疫抑制療法(ステロイド剤)を行う。が、特発性自己免疫性溶血性貧血と異なり、制癌剤(シクロフォスファマイド・ビンクリスチン)が奏効する。
●予後:制癌剤の効果が期待できる分、救命率が70~80%であり、特発性自己免疫性溶血性貧血に比べて高い。
<飼い主の注意点>
●点状出血、紫斑、口腔粘膜からの出血、血便、血尿などの異常が見られたら、特発性免疫介在性血小板減少症を思いだし、即、病院へ。