<今日のワンコ> 患畜は平成22年8月27日生まれのイングリッシュ・シープドッグ、♂で名前はまだない。10月26日、関東から宮崎空港に到着。新しい飼い主は日南だが、チェリー・アイ(第3眼瞼の軟骨の脱臼)の診察を希望して空港から当院に受診した。最初の全身チェックで収縮期心雑音を聴取した。
○先天性心奇形は人と同様に0.5%~1%程度と推察されるが、生直後に死亡すれる例も少なくないと考えられる。
○イングリッシュ・ブルドッグには肺動脈狭窄症、心室中隔欠損症、ファロー四徴症が多い犬種とされる。
○宮崎大学に精査を依頼した結果、心室中隔に径が2~3mmの欠損孔が確定された。
○欠損孔が小さいことから、生涯の生活に大きな支障はないとのことで、「トラ」の名をもらって、めでたく新家族入りした。
<今日のテーマ>ステロイドと聞いただけで、「ステロイド・アレルギー」を示す飼い主も少なくない。反面、例えばアメリカでは「アスピリン」を「神から授かった薬」という場合がある。この世にステロイドホルモン製剤がなければ、多くの患者や病気の動物、そして獣医師や医師も「被害甚大」である。そこで、今回から3回は1回目がステロイドホルモンの生理作用について、2回目がステロイドホルモンの臨床応用とその薬理作用について、3回目がステロイドホルモンの副作用について述べ、ステロイドホルモンの効用を示す。
<1回目・糖質コルチコイドの生理作用とそのメカニズム>
1.炭水化物・蛋白質・脂質代謝に対する作用:筋肉などにおいて蛋白質分解によるアミノ酸生成を促進する。脂肪組織では、脂肪を分解して脂肪酸とグリセロール生成を促進する。肝臓ではこれらの生成物からグルコースを新生して血糖値が上昇する。また、肝臓ではグリコーゲンの蓄積やアミノ酸分解も促進する。これらは結果的に脳や心臓といった生命維持のための重要な臓器の機能保護に大きな役割を果たす。
2.抗炎症作用:強力な抗炎症作用を有し、その主な作用機序は肥満細胞のヒスタミンの放出抑制と、プロスタグランジン合成抑制である。
3.血液リンパシステムに対する作用:リンパ球、好酸球、単球を減少させ、好中球の浸潤を抑制する。これらの作用により、抗体産生や細胞性免疫が抑制されるため、細菌増殖は起こり易くなる。赤血球に関しては、その貪食を遅延させることで血液内の量を増加させる。
4.循環器系に対する作用:ノルエピネフリンやアンジオテンシンⅡなどの血管収縮物質の作用を増強する。
5.中枢神経に対する作用:妊娠動物に過剰なストレスを負荷すると、生まれた子供の不安関連行動が増加する。妊娠動物において、過剰なストレスが母体内の糖質コルチコイドを上昇させ、それが胎児の中枢機能に影響を及ぼす可能性が示唆されている。これらは動物実験で明らかにされた事実であり、妊娠動物と生まれた子供の情動には密接な関係がある。