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11月11日(木)放送のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「顔面神経麻痺」でした。

 最近の症例で、「2日前より右側口唇が下垂し、右眼瞼も垂れてきた」という主訴で来院した8歳の雑種犬がいた。元気、食欲、歩行は正常で、痛みも無く、他の神経症状は認められない等の所見から、「顔面神経麻痺」と仮診断した。今回のテーマはこの「顔面神経麻痺」である。

●犬や猫の顔面神経麻痺はそれほど多い疾患ではないが、脳神経障害の中では最も一般的な疾患である。

原因は何か?
 原因が分かるもののうち、最も一般的なものは中耳炎、感染、腫瘍などによる顔面神経障害である。その他、免疫介在性、外傷、甲状腺機能低下症、脳腫瘍、脳炎などが挙げられる。
 しかし、犬では75%猫では25%特発性であり、原因不明のケースが多い

上記の症状以外にどのような症状があるか?
①瞬きができない。
②唇を動かせない。
③耳を動かせない(耳が垂れる)。
④涙が少ない(①の症状も加わり角結膜炎を引き起こす)。

中耳での障害が原因の場合では、末梢性前庭疾患やホルネル症候群などを併発することがある。この場合、末梢性前庭疾患では眼振や斜傾、ホルネル症候群では縮瞳や瞬膜(第三眼瞼)突出といった症状が認められる

脳(中枢)での障害が原因の場合では、他の脳神経症状が認められる。具体的には、前庭神経障害による眼振や斜傾、三叉神経障害による眼球の後引反射の消失などが認められる

慢性化すると、筋萎縮や拘縮による顔面神経の刺激が急性あるいは慢性に生じる。その結果、稀ではあるが、片側性の痙攣が生じ、顔面筋肉の拘縮(耳が立ちっぱなし、鼻が曲がる)、唇の収縮がおこることがある

治療法や予後は?
 耳鏡による耳道検査、血液検査、頭部レントゲン、CT検査、MRI検査などで原因が特定された場合には原疾患の治療を行う。
 特発性の顔面神経麻痺の場合、残念ながら確立された治療法はない。ただし、2~6週間で改善するケースもある。

文責:棚多 瞳

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