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12月2日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」は「バベシア症」についてでした。

 今回はダニが媒介する「バベシア症という疾患について述べる。ダニは咬まれてただ痒いだけでなく、やっかいな病気を媒介(ばいかい=うつす)する。

●バベシア症は「バベシア=学名はBabesia gibsoni」という原虫が原因となって起こる病気で、赤血球内に寄生して2分裂で増殖を繰り返し、赤血球を溶血させることで貧血を引き起こす「マダニ」(主にフタトゲチマダニ)によって媒介され、ダニの吸血部位である犬の皮下組織に原虫が放出される。原虫を伝搬するには最低2~3日間の吸血が必要である。

具体的な症状は?
 ・貧血による可視粘膜の蒼白化
 (バベシア原虫の赤血球内寄生による直接的なダメージと赤血球に対する自己抗体産生、脾臓の腫大(=脾腫)による血液貯留により貧血が生じる)
 ・血小板減少(出血を認めることがある)
 (播種性血管内凝固症候群=DICや免疫介在性の血小板破壊によって生じる。血小板減少はよく認められる。)
 ・発熱
 ・元気消失、食欲不振、体重減少
 ・嘔吐
 ・黄疸
 ・黄褐色~褐色の尿(ビリルビン尿、血色素尿)
 ・脾腫
 ・呼吸促迫
 ・頻脈
 ・稀ではあるが重度の場合、ショック症状や多臓器不全となり、死に至ることがある。

 ※不顕性感染(キャリアー)の例もあり、その場合、抵抗(免疫)力を低下させるような疾患(例えば腫瘍や子宮蓄膿症など)やステロイド剤・制癌剤の投与、脾臓摘出などにより発症することがある。

 ※日本犬より洋犬(特にシェルティー、マルチーズなど)の方が重症化しやすい傾向がある。また、子犬では感受性が高く(免疫力が未熟なため)、重症化しやすい。犬の免疫力も症状の悪化に重要な役割を果たす。

 ※DICとは?:極端な血液凝固亢進となり、消費性凝固障害を呈する。悪性腫瘍、白血病、重症感染症、肝疾患(肝炎、肝硬変)、膵疾患、急性血管内溶血、全身性の血管炎、広範な外傷や熱傷、手術、ショックなどにより生じる。

診断は簡単にできるのか?
 確定診断は末梢血液の塗抹による赤血球(表面)の虫体を確認するが、慢性感染や不顕性感染のケースでは虫体を確認できることは稀である。血清診断に頼るこのもある。

治療法はあるのか?
 抗原虫剤が使用されることが多いが、完全に排除できるわけではない。その為、再発してしまう例が多い。また、犬は抗原虫剤に対する感受性が高く、注射部位の疼痛、胃腸障害などの副作用を生じやすい。小脳の出血による運動失調や不全麻痺といった、症例によっては死に至る重篤な神経症状を呈することもある。その他、栄養補助、輸血、輸液などの治療を行う。

●上述のように、完全に原虫を排除できないことも少なくなく、副作用も出やすい。そのため、感染してしまうとやっかいな疾患である。大切なのは予防!である。ノミ・ダニ予防薬の投与(年中)はもちろんのこと、山野に行かない、草むらなどをなるべく避けるといった心がけも大切となる。

文責:棚多 瞳

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