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12月9日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「腫瘍の原因」についてでした。

 今回は「腫瘍の原因」について述べる。犬や猫も高齢化が進み、犬猫の死因のトップは「癌」で、犬の47%、猫の32%に上っている(マーク・モーリス基金によるアメリカ合衆国での大々的な調査)当病院でも癌に苦しむ犬猫は多く、「何故うちの子に限って癌になってしまったのか? 飼い方が悪かったのか?」という質問が多い。難題であるが、今回はそんな疑問について、現在考えられている原因について記述する

まず、腫瘍とは何か?
 腫瘍とは、「細胞が異常な増殖パターンを示すこと」である。この異常な増殖は、遺伝子レベルの変化(遺伝子の変異)の結果として生じる。癌はふつう、いくつかの遺伝子変異により生じる。その発生は年齢に依存する。

動物における腫瘍の原因として考えられるものは? 
ウイルス
 ・パピローマウイルス:乳頭腫(分かりやすく言うと「いぼ」)を生じる。約6ヶ月で消失することが多いが、悪性化することもある。
 ・FeLV(猫白血病ウイルス):リンパ腫、白血病のリスクが高まる。リンパ腫のリスクはFeLV陰性猫に比べ、62倍にもなる。また、過去にFeLVの暴露を受けただけでも40倍リスクが上がると言われている。若い猫に腫瘍を起こしやすい。
 ・FIV(猫免疫不全ウイルス):リンパ腫、白血病のリスクが高まる。ウイルスによる免疫抑制、あるいはウイルス挿入突然変異の直接的な関与によると考えられている。歳をとった猫に腫瘍を起こしやすい。
ワクチン誘発性肉腫:FeLV感染を予防するためのワクチンにより腫瘍を生じることもある。1/5000~1/10000の確率で生じ、ワクチン接種部位での炎症の関与が疑われている。
化学物質:除草剤、農薬、殺虫剤、タバコの煙、薬などの関与が疑われている。
 ・抗癌剤であるシクロフォスファミド投与により、膀胱の移行上皮癌のリスクが高まる。
 ・牛において、ワラビにある発癌物質が癌への悪性転換に関与する因子となっている。
慢性炎症
 ・火傷や傷跡での扁平上皮癌の発生など。
寄生虫感染
 ・アフリカやアメリカでは風土病としてぜん虫が食道で腫瘍(線維肉腫や骨肉腫)をおこす。
放射線照射 
太陽光
 ・白色の猫での扁平上皮癌の発生など。
ホルモン
 ・ホルモン依存性の腫瘍には、乳腺、子宮、卵巣、前立腺の腫瘍がある。これは、犬や猫では広く研究されているため、同サイト内で「避妊」「去勢」で検索。
遺伝的腫瘍
 ・特定の遺伝する遺伝子は動物では確認されていない。しかし、ボクサーなどにある種の癌の素因があることはよく知られている。

 ※※マークモーリス基金によると、癌による死亡率が最も高いのはゴールデン・レトリーバーで56.6%となっている。実際、老齢のゴールデンが体調が悪いと来院した場合、多くのケースで腫瘍が発見される。

文責:獣医師 棚多 瞳

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