今回のテーマは、「年末・年始に多い疾患」である。
●まず挙げられるのが、交通事故である。去年の年末には交通事故による眼球突出のシーズーが来院した。人が忙しいこの時期、飼い主のちょっとした気の緩みが生じ、犬や猫の脱走による交通事故事故の誘発や自分の車で轢かないよう注意したい。
一方、交通事故に遭わなくとも、骨折を起こし易いのが人気犬種のトイ・プードルやチワワ、パピヨンなどの小型犬で脚の細い犬種である。特にトイ・プードルは骨折しやすい犬種のダントツである。人間が抱いていて落としてしまったとか、階段から落ちた、ソファーから自分で飛び降りた…など、実に簡単に骨折する。手術で治癒して間もないのに、もう一方の足を骨折するケースも決して珍事ではない。
●心疾患の急患で来院する犬猫も多く、毎年肺水腫の犬や猫が必ず来院する。犬では僧帽弁閉鎖不全、猫では肥大型心筋症が多い。その病状の悪化には、食餌やストレスなどが大きく関与している。正月に普段は避けている塩分が多めの食餌やおやつを与えると循環血液量が増大して既存の心不全が悪化して肺水腫に至る。「病院のホテルに預けておけば安心」というのも、ストレスの観点から必ずしも推奨できない。ペットも、ストレスの無い我が家での正月の方がいいに決まっている。
また、癲癇などの基礎疾患がある犬猫では①普段より多めに薬をもらっておく、②緊急時の対処法を聞いておくなどといった準備が必要である。
●最後に、異物や普段食べない食餌の摂取にも気をつけていただきたい。年末早くも竹串、果物の種、紐、ビニール、石などを誤食した食いしん坊たちが来院している。異物のみならず、普段食べなれない食事による下痢・嘔吐が多いのも年末年始の特徴である。
加えて、脂肪分の多い食物の大量摂取やゴミ漁りなどで急性膵炎を惹き起こすことも頻繁である。主な症状は、嘔吐、腹痛、食欲消失、下痢、鮮血便などで、その程度はさまざまである。
今年も色々な犬猫が来院し、日々勉強の毎日でした。昨日よりも、1週間前よりも、より良い診療ができるよう成長していけたら、と思います。私事ですが、今年は去年の反省を生かし、捨て犬コロ助、アフロ、メイの三名は広島までの長旅に付き合わせず、宮崎に残していこうと思います。
文責:獣医師 棚多 瞳