<今日のテーマ>:冬に多くみられる疾患
●冬は12月~翌2月の3ヶ月。
●この時期は気温、気圧とも湿度も低く、急激な気温や気圧の変動もあり、雪も降る。
●夏場に比べ冬場に多い疾患は犬では「筋骨格系の疾患」であり、猫では「泌尿器の疾患」である。
<犬の筋骨格系疾患>
●犬の「筋骨格系の疾患」は関節炎や椎間板ヘルニア、膝蓋骨脱臼などを指す。
●何故かは、人を含めて不明な点もあるが、冬は気温の低下や気圧の変動などにより、動物の身体が冷えるため血行が悪くなって、痛みを感じ易くなると考えられている。
●また、寒さのため、飼い主が出無精になり、飼い犬の散歩が少なめになることで、贅肉が増え、体重の増加や筋力の低下を招く。
●病気の発症の予防対策
①風のあたる場所や、極端に寒い場所は避ける。
②体や筋肉が温まっていないと関節や筋肉を痛め易いため、運動する際は急な激しい運動を避ける。
③散歩前にはマッサージやストレッチをする。
④散歩が十分でなく肥満になる場合にはフードの量を減らす。
⑤グルコサミンやコンドロイチン硫酸などサプリメントを与える。
<猫の泌尿器疾患>
●猫の「泌尿器疾患」は膀胱炎、腎・膀胱結石、尿石症、下部尿路疾患などを指す。
●冬はその寒さから水をあまり飲まなくなり尿量が減ることや、トイレが廊下や洗面所など少し寒い場所にあると排尿回数が減ることから、細菌感染が起り易くなったり、尿中に結晶が生じやすくなる。
●病気の発症の予防対策
①飲みたいときに新鮮な水を飲める環境にする。
②排尿し易い環境にする。
③部屋や飲み水を温かくする。
④フードを微温湯でふやかして水分補給の補助とする。缶やパウチタイプの食餌にする。
⑤これは犬でも言えることだが、トイレは室内でもできるように躾けておく。
<冬場に留意すべきその他の疾患>
1.呼吸器系
●寒さや乾燥した空気は、咽喉や気管を刺激して咳の原因ともなるので要注意。
2.心臓病
●犬に多い心臓病(僧帽弁閉鎖不全症)は、どちらかと言えば夏場に肺水種を呈することが多いが、これは犬の体熱放散(体温調節)の機構が呼吸に頼り切っていること(パンティング)に原因する。しかし、そうは言っても、冬場の急激な気温の変化(温かい部屋から、寒い屋外に出る)は、末梢の血管を収縮させて血圧を急激に上げ心臓への負担が増し、心臓麻痺を起こし得る。
●予防対策
①洋服を着せる。
②特にプードルやチワワ、シーズー、ミニチュアダックスなどの小型犬種は、体重の割に体表面積が広いため体熱を放散し易いので要注意。
③洋服を着せるだけで、体表の温度が5度上昇する。
④陽のある時間帯での散歩。
3.老犬の脳血管障害
●最近、老犬の突発性の脳血管障害(脳梗塞、脳内出血)を疑わせる症例が増加している。
●発症の機序は、僧帽弁閉鎖不全症の心臓麻痺と同様で、急激な温度差で末梢血管が収縮した結果、血圧が上昇して起こる。
4.伝染病
●人のインフルエンザなどと同様にウイルスは低温や乾燥に強い。
●例えば、猫の伝染性鼻気管炎(猫かぜ)ウイルスは4℃の環境で154日間、25℃で33日生存し得るが、37℃ではわずか3時間しか生存しない。
●対策
①ワクチン接種。
②体力保持に努める。
※犬パルボウイルス(25℃で3ヶ月生存)、猫パルボウイルスは温度の影響を受けにくい。
※犬ディステンパーウイルスも温度の影響を受けにくい(4℃、25℃ともに7~8週間の生存)。
以上の点に留意しながら、ペットの冬場の健康管理に役立ててもらいたい。