フィラリア予防や狂犬病予防接種も大事ですので、今年はまだしていないという方は早めに動物病院に行って欲しいと思いますが、忘れてはならないのがもうひとつ、それがノミ・ダニの予防です。そこで、今回はノミについてお話します。
ノミの生態の特徴
ノミは人や動物の体に付き吸血する外部寄生虫で、気温が13℃以上、湿度50%以上になる春から秋にかけて活動が活発になります。しかし、暖房を使った室内では冬でも発育可能なため一年を通して注意が必要です。ノミは草むらなどに潜んでいて、動物が近づくと、体から出る二酸化炭素や熱に反応して動物に飛びつきます。ノミは体長が1~3ミリで翅はありませんが、発達した後脚でおよそ体長の100倍の高さに飛び付くことができます。ノミの動きは素早く、動物の毛の中に隠れてしまうため見つけ難いのですが、ノミの糞が見つかることがあります。黒っぽい小さい粒を見付けたときは湿らせたティッシュの上に乗せ、まわりが赤茶色になったときは血を吸血したノミの糞の可能性があります。
ノミが引き起こす疾患
ノミに刺されると刺咬症と呼ばれる局所の痒みだけでなく、ノミの唾液中に含まれるハプテンとよばれる抗凝固成分がアレルゲンとなって強い痒みを伴う皮膚炎を伴うノミアレルギーを起こすことがあります。ノミの刺咬症の痒みは寄生したノミの数に比例しますが、ノミアレルギーでは1匹でもノミがいるとアレルギー反応を引き起こしてしまいます。また、アトピー性皮膚炎のある動物では、細菌やノミなどの感染が加わることで発症することが知られるようになり、アトピー性皮膚炎の治療だけではなく二次的な感染を治療することが重要になります。
他にもノミが媒介する病原体による感染症を引き起こす危険性もあります。ノミが媒介する感染症にはイヌ・ネコの瓜実条虫感染、ネコのヘモバルトネラ症があります。瓜実条虫感染では嘔吐や下痢の症状が、ヘモバルトネラ症では貧血や発熱が見られます。
ノミが引き起こす人の病気としては「猫ひっかき病」という病気がよく知られています。猫ひっかき病はネコノミの糞便中に含まれるバルトネラという菌がネコの爪に入り、ネコにひっかかれた際に人に感染します。ネコでは無症状ですが、人では発熱やリンパ節が腫れる症状がみられます。日本ではネコの9~15%がこの菌をもっていると言われています。
ノミの予防法
ノミの予防をするには、ノミがいる場所に近づかないことが一番ですが、お散歩などで外に出る機会のあるワンちゃん、ネコちゃんには予防薬があります。予防薬は昆虫の中枢神経伝達物質にのみ強い親和性を示すため、脊椎動物であるイヌやネコ、人にはほとんど作用せず安全に使用できるように作られています。同時にマダニ予防もすることもできます。量販店で購入できる類似品は成分が違ったり、濃度が薄かったり十分な効果が得られないものがあります。また市販されているノミ取りシャンプーやノミ取り首輪は刺激が強く皮膚炎を起こす子や、ノミ取り首輪で中毒を起こす個体もいますので注意してください。ノミ・マダニの予防薬は様々なタイプがあり動物病院で処方することができますので、まだ予防されていない方はぜひ一度動物病院に相談されることをお勧めします。
文責:藤﨑 由香