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7月21日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「食中毒と犬猫」についてでした。

 今回は犬猫から人に感染しうる「食中毒」について述べる。食中毒の原因となる病原体の摂取は食品だけとは限らない。犬や猫に接することで人が食中毒の原因菌を摂取してしまうこともある

≪腸内出血性大腸菌≫
●4月下旬に富山県等においてユッケの喫食が原因とされる腸管出血性大腸菌O111による食中毒が発生した。また、海外でも5月下旬にドイツにて生野菜が原因と推定される腸管出血性大腸菌O104による食中毒が発生した。

●腸管出血性大腸菌は経口摂取され、腸管内で定着・増殖し、ベロ毒素という毒素を放出する。その毒素により腸管出血を生じる。また、毒素が血管内に吸収されると溶血性尿毒症症候群(溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全)となり死にいたることがある。

●腸管出血性大腸菌の主な保菌動物は牛・羊・山羊などの反芻動物で、腸管内に住み着き断続的に排泄される。これらの家畜は症状を示さないことが多く、見ただけでは菌を保有しているかどうかは分からない。

●1996~1998年犬と猫で大腸菌O157保有について調査がされており、ごく少数ながら保有する犬や猫が存在した。腸管出血性大腸菌を実験的に犬に投与した場合、症状を示さなかったとの報告もあれば、人と同じように溶血性尿毒症症候群の症状を示したとの報告もある。

≪カンピロバクター≫
●カンピロバクターは螺旋状の菌でコルク栓抜き状の運動が特徴的である。原因食品としては肉類が多く、特に鶏肉に多い。

●牛、豚、鶏などの家畜だけでなく、犬や猫でも保菌していることがある。下痢をしている子犬の3/4からカンピロバクターが検出されるという報告もある。子犬や子猫では症状を示すことも多いが、成犬や成猫では症状を示さないことも多い。

●人でCampylobacter jejuni感染症の6%が子猫との接触によるものとの報告がある。

※※人の食中毒の原因となる得るものは、この他にもウェルシュ菌サルモネラ菌などがあげられる。
※※犬や猫から食中毒の原因菌を摂取してしまうケースはそれほど多くはない。しかし、犬や猫は色々な菌を保菌していることを忘れず、食事前の手洗い、トイレの消毒(漂白剤を使用すると良い)などを心がけたい。
※※食中毒による症状の重症化には人の抵抗力も大きく影響する。小さい子供や高齢者のいる家庭、持病のある人や免疫や抵抗力が低下した病弱な人は注意を要する。

文責:棚多 瞳

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