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8月16日(木)のMRT「ペット・ラジオ診察室」のテーマは「犬と猫のリンパ腫」でした。

○リンパ腫とは?
・犬と猫のリンパ腫は、腫瘍全体の中で犬では3番目猫では1番目に多いといわれる。
・リンパ球は白血球の一種で免疫を担っている細胞であり、リンパ腫はそのリンパ球が腫瘍化したものである。
・リンパ球はリンパ節や脾臓などのリンパ系組織だけでなく、あらゆる組織に存在していて、骨髄で造られている。
リンパ球が骨髄で腫瘍化した場合はリンパ球性白血病、骨髄以外で腫瘍化するとリンパ腫といわれる。

○リンパ腫は発生する場所によって以下のように区別される。
多中心型:全身のリンパ節が腫大する。
縦隔型:縦隔リンパ節が腫大する。
消火器型:胃から直腸までの胃腸管へ浸潤する。
節外型:リンパ節以外のさまざまな組織へ浸潤する(犬では皮膚型、猫では鼻腔が多い)。

○その他、腫瘍化したリンパ球のタイプによっても分類できる。
High grade (低分化型):幼若なリンパ球が腫瘍化したもの。
Low grade (高分化型):成熟したリンパ球が腫瘍化したもの。
B細胞型:免疫系の一部として抗体を造ることで感染防御の役割をするB細胞が腫瘍化。
T細胞型:免疫全体を指揮、自己と非自己を認識する役割のT細胞が腫瘍化。
これらの分類は予後や抗癌剤の選択に影響するため重要になる

○どんな症状が?
・共通する症状としてはリンパ節腫大、元気消失、食欲不振など非特異的症状が認められる。
・その他リンパ腫が発生する部位によって症状が異なる。縦隔型では呼吸困難や咳、消化器型では嘔吐や下痢、皮膚型では脱毛、痒み、紅斑などが認められる

○確定診断は?
・病理組織学的検査で確定診断できる。
FNA(針吸引生検)で診断できるケースも多い。縦隔型、消化器型では胸水、腹水中に腫瘍細胞がみられることもある

○犬と猫のリンパ腫の違いは?
・犬:発症率0.025%。腫瘍全体で3番目に多い。発症因子として何らかの遺伝子が関与していると考えられている。多中心型80%、消化器型7%、皮膚型6%、節外型3%。
・猫:発症率0.2%。約70%がFeLV陽性である。FeLVに感染した猫の20~25%が発症。 FeLV感染猫の危険度60倍、FIV感染猫の危険度5倍に及ぶ。近年はFeLV、FIVともに感染猫は減少傾向のため、ウイルスと関連のないリンパ腫増加傾向。ウイルス感染が関与する場合は縦隔型、多中心型が多い。関与しない場合消化器型が多い。
・犬と猫のリンパ腫は腫瘍の中では高率に認められ、特に猫ではウイルス感染症と関連する。
腫瘍のタイプによって予後や抗癌剤の選択が異なるため的確な分類が必要である
 
次回は「リンパ腫の治療と予後について」です。
 
文責:獣医師 藤﨑 由香

 

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