9月に入ってまだまだ残暑が厳しいが、世間は行楽シーズンに突入。この時節、ペットはどんな事に注意すべきだろうか。
○あるヨークシャーテリアは昨年10月、主人と共に県北の実家に里帰りし、山中の観光スポットを散策。帰宅後5日目頃から元気・食欲が低下し、発熱を呈した。検査でマダニが媒介するバベシア症と診断。バベシア症は病原原虫(Babesia gibsoni)が赤血球に寄生し、赤血球を破壊(溶血)して貧血を惹き起す疾患である。抗原虫剤(副作用が強い)の投与や輸血の実施、そして人間のマラリア治療薬を投与して完治した。この抗マラリア薬の値段は我々の購入価で1990USドル(日本円で約16万円)と驚きの高価である。
○その他、自動車内での置き去り(墓参りの間、クーラー無しで窓〆切で熱中症)などの注意も必要。
ところで、この行楽シーズンの旅行などは、人間が生きる上の精神衛生の面でも、家族の絆を構築する上でも重要な要素である。
○最近、ペットとの関係が密になるに伴って浮上して来たのが、旅行する際にペットの面倒を誰が見るか・・・である。
○旅行中、犬猫の面倒を見れないので旅行自体を見合わせる家庭も多い。「ペットが死んで、その頃は定年退職しているであろうから・・・旅行はそれから・・・」と言っていた人が、実際定年になったら自分が病気になってしまったという実話も少なくない。
○老猫や老犬に限らず若いペットも「ペットホテルや親戚、知人宅でペットをひとりにするのは可哀そうで忍びない・・・」という理由で、飛行機に乗せて同行し、旅行先ではペットホテルに預けるという飼い主がいるのも現実の話。
○旅行中、老犬を車で連れて回る飼い主も少なくないが、果たして動物はこの旅行に満足しているか・・・問うてみる必要がある。
○「猫は家につき、犬は人につく」と言うが、猫は1~2日、まともに水を飲まないこともしばしば(3~4日目頃から食事や飲水が正常化する)。老猫で特に腎臓が悪い個体では点滴などの治療が必要である。
○犬では預かって5日~1週間で「ホームシック」になり、猫とは逆に飲水や食事量が減る。老犬で飲水量が減ると腎不全が発症する危険が増す。
○では、どうすべきか。小さい時から、必要以上に可愛がらず、間違っても「分離不安症」にさせない。
○小さい時から、ペットホテルなどに慣らす。
○老齢のペットや持病のあるペットでは動物病院でのホテルが望ましい。この観点から、我々動物病院側の意識改革や専用設備の拡充を図る必要がある。
「人間の生活が第一」。「ペットがいるから、旅行が出来ない」という状況は是非とも避ける環境整備が必要である。