<はじめに>
●関節炎は犬と猫どちらでもみとめられる。
●関節炎はレントゲン検査、関節液の検査、全身性の疾患の有無によってさまざまなタイプに分類することができ、タイプによって対処法が異なる。
<分類>
●変形性関節炎(退行性関節炎)
○12歳を超えた猫の約90%がもっているという報告もあるほど高齢の犬、猫で多くみられる。
○感染性関節炎
・細菌
・マイコプラズマ
・リケッチア
・真菌
・ウイルス
○免疫介在性関節炎
・全身性紅斑性狼瘡
・特発性免疫介在性多発性関節炎
・反応性多発性関節炎
○関節リウマチ
<症状>
●疼痛、跛行、発熱、腫脹など
●猫ではジャンプできなくなった、トイレを失敗するようになった、爪とぎ・毛づくろいの回数が減った、体に触れられるのを嫌がるなどささいな行動の変化がみられることもある。病院では固まって動かなくなってしまう子も多いので家での様子の観察が重要である。
●肘、膝、股関節が好発部位である。
<診断>
●レントゲン
●関節穿刺・関節液検査
●全身性疾患の有無
これらの検査結果をもとにそれぞれのタイプに分類する。
<治療>
●感染性…抗生剤、抗真菌剤
●免疫性…ステロイド、免疫抑制剤
●変形性…疼痛を軽減し、悪化を食い止める目的で使用する。QOL(生活の質)の改善
<管理・予防>
●環境を整える:段差をなくす、食事や水の位置を飲みやすい高さに調節、トイレや眠る場所を低くする、ブラッシングするなど工夫が必要である。
●鎮痛剤
○免疫介在性の場合を除いて、非ステロイド性抗炎症薬を使用する。
○猫は肝グルクロン酸抱合能が低いので毒性が出やすいとされていたが、近年ネコでも安全に使用できる非ステロイド性抗炎症薬が登場し、ネコでの治療が可能となった。
●関節用サプリメントとフード:グルコサミン、コンドロイチンは軟骨変性の遅延、修復に有用であるとされている。
●体重管理:肥満は関節の負担を増やしてしまうため禁忌である。
<最後に>
●関節炎は高齢のイヌ、ネコで多くみられるため、今まで年齢のせいだと思っていた行動の変化も実は関節炎の痛みの影響かもしれません。痛みがひどい場合は鎮痛薬を使用しますが、日ごろの生活環境と体重管理が重要です。
文責:獣医師 藤﨑 由香