今回は「今日のワンコ」を2例紹介した。
症例1
実は本日、9歳の雌のM.ダックスでが嘔吐・食欲低下・元気消失の主訴で来院。「1週間前に梅酒の梅の種を誤食したかも? 2年くらい前にも梅の種で開腹手術の経験があるのですが・・・・・???」(飼い主の悲痛な弁)。胃内の一個は内視鏡で摘出し、もう一つは腸管内に達しており、開腹手術(小腸切開)をして摘出。M.ダックスは誤食・誤飲の好発犬種であるから、幼犬でなくとも要注意である。また、ある程度歳を取ってから誤食本能が目覚めることも少なくない。いづれにしても食べてはならぬ、食べそうなものを犬の傍に置かないことが重要である。
症例2
15歳の♂のM.ダックスが以前から前立腺肥大あり、今年6月に血尿で来院。抗生剤で改善される。9月には血尿は1回だけだが頻尿が目立つとのことで来院。超音波検査で前立腺部尿道の拡張と、何よりも前立腺の数カ所にシスト(嚢胞)が認められる。血液検査や心臓の検査で全身麻酔に堪えうると判断して去勢手術を実施した。2~3週間で前立腺は正常のサイズに縮小し、嚢胞も消失、頻尿や血尿も正常に改善された。犬では人と違って前立腺癌は少ないが、前立腺嚢胞は前立腺膿瘍に進展したり、頑固な血尿や頻尿の誘因である。高齢犬であっても去勢手術は10分以内と短時間なので、心臓や血液の検査に大きな問題がなければ積極的に手術を考えるべきである。繰り返すが、前立腺嚢胞が重度化したり、膿瘍に進展した場合の治療は極めて厄介で、長期の抗生剤投与や前立腺全摘出などの大手術となる。