<今日のワンコ>
11歳の雑種、避妊雌。1歳半から秋になると体を痒がる。それ以外の時期は痒がらない。治療経過およびアレルギー検査の結果より、 犬アトピー性皮膚炎と診断して、現在まで発症時に治療。
○アレルギー反応とは…
・環境中の物質に対して、生体が引き起こす過剰な免疫反応の1つ。環境中の物質(アレルゲン)に対して、抗原特異的免疫グロブリン抗体(IgE)を産生する。産生されたIgEはアレルゲンと結合し、さらに肥満細胞と結合すると肥満細胞からヒスタミンなどの刺激性物質が放出され痒みなどの皮膚症状が現れる。
○アトピーとは…
・IgEを産生する体質のこと。
○犬アトピー性皮膚炎とは…
・定義:特徴的な慢性の皮膚炎を呈する症例において環境アレルゲンに対するIgEをもっており、そのIgEの上昇と皮膚炎の発症が関連している場合。
・つまり、IgEが検出されるが症状がまったくない場合もあり、そういった場合はアトピーというアレルギーの素因があるが犬アトピー性皮膚炎とは言えない。
○アレルギーを引き起こす原因は・・・
・環境アレルゲンだけではなく、食物アレルゲンが原因の場合もある。また、アレルギーは一つの要因だけではなく複数の要因が重なって、症状を引き起こす場合が多い。
○食物アレルギーとは…
・食物が原因でアレルギーを引き起こすものをまとめて「食物アレルギー」と呼ぶ。そのため、皮膚症状を呈する場合や消化器症状を呈する場合、その両方の症状を呈する場合がある。
・腸管からの食物アレルゲン感作は離乳期に成立しやすいと考えられていて、1歳未満で発症することが多い。また食物アレルギーにはIgEによるⅠ型過敏症が関係せずにリンパ球によるⅣ型過敏症が関与する場合があることが分かり、双方の結果が一致しない場合もある。
●今回の症例ではアレルギー検査(IgEの測定)の結果をもとに、アレルゲンを含まないような処方食を一年を通して給餌されているが、必ず秋になると症状が出ることから季節性の環境アレルゲン(草や樹木)が原因である可能性が強く疑われる。
○予防(参考文献:㈱スペクトラム ラボ ジャパン 植物・カビの解説)
①草や樹木がアレルゲンの場合
・散歩は草木の多い場所を避ける。
・花粉の飛散は早朝に多いので、早朝の散歩を避ける。
・散歩後はシャンプーやブラッシングをして花粉を落とす。
・空気清浄器を設置する。
②カビやイエダニがアレルゲンの場合
・湿度を低くする(40~60%以下)。
・こまめに部屋の清掃をする。
・ペットの敷物、ぬいぐるみなど熱湯で洗浄後、完全に乾燥させる。
③その他
・ウール、コットンなど敷物の素材がアレルゲンとなる場合には他の素材のものに変更する。
・タバコの煙の間接喫煙がアレルゲンとなる場合もある。
文責:獣医師 藤﨑 由香