<今日のニャンコ>
生後2ヶ月半の雑種猫が車のエンジンルームに入り込んでいたところを保護されて来院。大腿骨骨折と診断して手術を実施。術後の検診の際に「ウンチの中に白い虫が出てきた」と便を持参。白い虫は条虫の片節と呼ばれる一部分で、虫卵検査によってマンソン裂頭条虫と判明!!
今回の放送では犬と猫の消化管に寄生する条虫について述べる。
・マンソン裂頭条虫
○虫体は成長すると全長が1m以上あり、最大で2.5mにも達する。糞便中に離断した片節が数個連なって排泄されることが多い。マンソン裂頭条虫はケンミジンコの体内でプロセルコイドに成長し、ケンミジンコを食べたカエルの体内でさらにプレロセルコイドに成長後、そのカエルを摂食した犬または猫の体内で成虫になる。カエルを捕食したヘビから犬、猫に入ることもある。プロセルコイドをもったケンミジンコを含む水を飲んだり、カエル、ヘビなどを生食することでヒトにも感染する。この場合、稀に成虫に成長するが、多くは幼虫のまま体内を移行する。
○見分け方:虫卵…約60μmの両端が尖ったレモン型(左右不対称)
茶褐色
虫体…やや黄色みがかった白色
片節は縦径よりも横径が長い
・瓜実条虫
○瓜実条虫卵はノミの体内で成長し、ノミを摂食した犬または猫の体内で成長する。ノミ体内の幼虫を誤って飲み込むことで感染する。特に乳幼児のいる家庭では注意が必要である。
○見分け方:虫卵…約30~50μm(回虫卵の半分)の卵円径
無色~淡黄色
虫卵が多数集まった卵嚢が見られること
虫体…淡紅~白色
片節はゴマ粒~米粒大
横径よりも縦径の方が長い
・猫条虫
○猫条虫卵はネズミの体内で成長し、ネズミを捕食した猫または犬の体内で成長する。
●排泄された条虫を見つけた場合は、駆虫薬を投与することで駆虫することができるが、条虫の種類によって投与量が異なる。そのため、条虫の鑑別が重要になる!!
●条虫というと昔はよく見られていたそうだが、近年は室内飼育が増えたこともあり減少している。しかし、今回の症例のように幼猫であっても条虫が見つかることもあるので、普段から便を観察することが重要である。発見時には病院に虫体(片節)を持参してもらうと鑑別しやすい。
最後に一言
ラジオに出演させていただくようになって、早いもので1年7カ月が経ちます。少しでも皆様の参考になる話ができるようにと努力してきたつもりではいますが、拙い放送を毎回お聞き頂きありがとうございました。
今までの放送を参考にして頂き、予防をしっかり行なうとともに、万一異変を感じた場合には早期発見・早期治療ができるよう、早めの受診を心がけてください。皆様の愛犬・愛猫が健康に暮らせるように、これからもサポートしていきたいと思っていますので、今後も宜しくお願いします。長い間「ペット・ラジオ診察室」をお聴き頂き、本当にありがとうございました。
文責:獣医師 藤﨑 由香