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今週の症例(2013年11月10日)No.26:慢性リンパ球性白血病が疑われ、化学療法で長期管理している雑種犬の1例

[症例]:13歳、雑種、避妊雌。
[診断・治療・経過]:健康診断時の血液検査にて、白血球数の増加(31,500/μl)が認められた。血液塗抹検査では、成熟リンパ球が約80%に増加していた。臨床症状は特に認めず、一般状態は良好であった。慢性リンパ球性白血病を疑い、その後は定期的に白血球数をモニターした。第10病日の白血球数は34,100/μl、第51病日が42,100/μl、第79病日が50,000/μl、第114病日には61,600/μlまで徐々に増加した。そして第156病日には白血球数が78,700/μlまで増加したため、(骨髄穿刺は実施していないが)、慢性リンパ球性白血病と仮診断して抗ガン剤治療を開始した。この時点の赤血球数は829万/μl、血小板数は27万と正常値であった。化学療法は、クロラムブシルの隔日投与にプレドニゾロンの併用からスタートし、1週間後には白血球数が48,000/μlに減少した。白血球数をモニターしながらプレドニゾロンの投与量を漸減させ、現在は休薬中である。19カ月が経過した現在、クロラムブシルの投与間隔は週に1回まで減らしているが、白血球数6,500/μlと正常値を維持できている。

[ワンポイント講義]:
①慢性白血病は悪性の成熟した造血性細胞クローンが骨髄で増殖する疾患で、リンパ球性白血病(CLL)と骨髄性白血病(CML)に分けられる。
②犬でも猫でも認められ、犬では雄の方が多い。猫では、急性リンパ球性白血病と異なり、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)との関連性はない。
③末梢での腫瘍細胞増加が潜伏性に始まる為、初期では症状を認めない。多尿多渇、リンパ節腫大、跛行、発熱などが見られる。約80%の症例で貧血、約50%の症例で血小板数の低下がみられる。
④骨髄穿刺で成熟リンパ球の増加を確認し、その他の疾患を除外することで診断する。進行すると正常な造血細胞が腫瘍細胞によって占拠され、貧血や血小板数の減少などが見られる。
⑤治療開始の目安は、何らかの臨床症状が認められる場合や血球数が減少している場合、リンパ球数が60,000/μlを超える場合に実施する。クロラムブシル単独もしくはステロイド剤併用による治療を行う。二次感染。予防に抗生剤投与や貧血が見られる場合には輸血を行う。進行は緩徐で生存期間は1~3年と比較的長い。しかし急性転化とよばれる芽細胞期への転化が起こる場合があり、この場合は化学療法への反応に乏しく予後不良である。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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