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2015年1月16日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「猫の認知機能不全」でした。

(藤﨑):今日は前回の犬の認知機能不全の猫版です。

(戸高アナ):猫にも認知機能不全はあるのですね。

(藤﨑):猫でも人や犬と同様に認知機能不全はあると言われます。高齢の猫では、脳の病理学的変化も人や犬と同様に認められるという報告があります。しかし、認知機能不全の症状が加齢に伴い生じる症状なのか、それとも他の基礎疾患によるものなのかというと判断が難しい場合も多いのが現状です。

(戸高アナ):猫では何歳からが高齢になるのでしょうか。

(藤﨑):アメリカの獣医師の団体では、11歳~14歳までを高齢期、15歳以上を後期高齢期とし、それらを合わせてシニア期としています。

(戸高アナ):ではどういった症状が認められるのですか?

(藤﨑):見当識障害としては迷子になる、よく知っている人を認識できない、落ち着きなく歩き回る、障害物を避けられないなどの症状が見られることがあります。ほかにも周囲への興味の低下、反応性の低下など社会的相互作用の変化、日中の睡眠増加と夜間の睡眠減少、不眠や過眠などといった覚醒・睡眠周期の変化、不適切な場所での排泄、活動性の低下や無目的な活動の増加、食欲の増加や減退といったさまざまな症状が認められます。

(戸高アナ):さまざまな症状が見られるのですね… 猫ではどういった行動が問題になるのでしょうか。

(藤﨑):犬で一番問題になるのが鳴き声という話を前回しましたが、やはり猫でも一番多くみられるのが鳴き声と無目的な活動です。認知機能不全でも異常に鳴くという症状が見られますが、これとは別に体の違和感や痛み、不安でも鳴きます。高齢になると視覚、聴覚、嗅覚といった感覚機能が低下することから不安行動が見られたり、攻撃行動などが認められることがあります。何か訴えたいときにも鳴いて要求します。認知機能不全だと決め付ける前に、他に何か原因がないかどうか猫の気持ちを読み取る必要があります。

(戸高アナ):なるほど、他にも認知機能不全以外の原因がある可能性の症状はありますか?

(藤﨑):他にはトイレ以外の場所での排泄が問題になることもあります。しかし、猫は砂を準備しておけばそこで用を足すという習性があるため、認知機能不全でトイレが分からなくなるというのは少ないと言われます。

(戸高アナ):では、トイレ以外で排泄するときに認知機能不全以外ではどんな原因が考えられるのでしょうか?

(藤﨑):高齢の猫で多いのが慢性腎不全です。慢性腎不全があると尿量が増えて、その分トイレの清潔さが低下してしまうため、トイレでの排泄を嫌がるという可能性があります。また、高齢猫では60~90%のも猫で変形性関節炎があると言われるほど関節炎が多く認められます。関節炎の痛みで行動範囲が狭くなっていたり、足を持ち上げにくくトイレの縁が障害になっているという可能性もあります。

(戸高アナ):高齢だから認知機能不全だろう…と決めつけてしまうのではなく、他に原因がないのか考えてあげる必要があるのですね。

(藤﨑):そうですね。認知機能不全の5種類の症状、見当識障害、社会的相互作用の変化、覚醒・睡眠周期の変化、不適切な排泄、活動性のうちいずれかが当てはまると答えた割合は11~14歳では28%、15歳以上では50%になります。猫ちゃんを飼う上で決して他人事ではない認知機能不全、シニア期の猫ちゃんがいる家庭はもちろんですが若い猫ちゃんを飼ってらっしゃる家庭では若い頃との比較も重要になってきます。日頃から猫ちゃんの行動の変化をよく観察してみてください。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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