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タイトル 2015年4月24日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「カーミングシグナル・後編」でした。

(藤﨑):前回は猫のカーミングシグナルについてお話ししましたが、今日は犬のカーミングシグナルについてお話しします。

(戸高アナ):カーミングシグナルとは不要な争いを避けるために自分の立場や感情を相手に伝える際の行動、ボディーランゲージのことでしたよね。

(藤﨑):犬のあくび(欠伸)を見たことがある方も多いのではないでしょうか。このあくび、ただ単に眠たいわけではありません。高ぶった気持ちを抑えたり、相手の興奮を鎮めるような意味があります。例えば、知らない人が触った時、知らない場所に来た時、飼い主が食事の準備を始めた時など犬が興奮するような状況に陥った時にその興奮を鎮めようとあくびをします。人の深呼吸のようなものでしょうか、落ち着きたい時にあくびをします。イタズラをして怒られている時にあくびをすることがあります。何も知らないと『もう、怒られているのにあくびなんかして太々しい奴だな』と思いますが、実際は『そんなに怒らないで落ち着いてよ』というサインなのです。

(戸高アナ):なるほど、そんな意味があるのですね。

(藤﨑):同じような意味の行動に口元をペロペロなめるという行動があります。素早くペロペロする場合をフリッキングと呼ぶそうですが、これも高ぶった気持ちを抑えたり、相手の興奮を鎮めるような意味があります。これらの行動を使って不要な争いを避ける意味合いがあります。また、頭をブルブルと振るという行動も興奮した気持ちを抑える意味がありますが、同時にストレスを感じていたり、不快感を表しているとされます。執拗になでまわすとブルブルと頭を振ることがあります。乱れた毛を整えているわけではありません。実は『やめてほしいな、ストレスだな』という気持ちの表れなのです。猫と同様に顔や目線をそらすというのも相手に対して敵意がないことを表しています。視線をそらすのと同時に地面の匂いを嗅ぐという動作もよく認められます。

(戸高アナ):どうやら真正面から近づくというのは動物には敵意として取られてしまうようですね。ではどうやって近づいて行くのでしょうか…?

(藤﨑):犬同士は大きな円を描くようにしながら徐々に近づいていきます。同時にお尻の匂いを嗅ぎ合い、相手の情報を得ようとします。背中を見せるのも争う意思がないことを示していますし、お腹を見せて尻尾を丸め込む動作も降参の意味があります。

(戸高アナ):尻尾を振るのは嬉しいサインですよね?

(藤﨑):小刻みに左右に振るのは喜びや興奮です。仕事から帰ってきたときなど千切れんばかりに尻尾を振って出迎えてくれますよね。でもそればかりではないんです。ゆっくりと左右に振る場合には不安や好奇心を表したり、尻尾を巻いていたら恐怖心を表していたり、尻尾を直立させていたら自信や力を誇示する意味があります。

(戸高アナ):尻尾でいろいろな感情を表しているのですね。なるほど、尻尾を振るときは友好的な感情を表しているのかとばかり思っていました。

(藤﨑):遊びたい時には前脚を伸ばし、お尻を高くあげて遊びに誘います。「敵意はないよ、遊ぼうよ」といった具合に誘っているのではないでしょうか。一方威嚇する場合には、唇を上げて歯茎と犬歯を見せ、鼻にシワを寄せて威嚇します。犬が怒っている姿は分かりやすいので誰もが分かるのではないでしょうか。

(戸高アナ):威嚇された場合には正面から見てはいけないのですよね。目線をそらして背中を向けると降参という意味ですね…

(藤﨑):犬や猫をはじめ動物たちも不要なケンカはなるだけ避けようとします。カーミングシグナルを理解することで、言葉を話せない動物たちの気持ちを少しは理解することができるのではないでしょうか。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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