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2015年5月8日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「ノミ・ダニの予防」でした。

(藤﨑):今日はノミ・ダニの病気についてお話します。

(戸高アナ):気温も上がり半袖でもいい季節になりましたね。暖かくなると『ノミ・ダニ』の話が出てきますよね…

(藤﨑):ノミ・ダニの話は毎年させてもらっていますし、最近は予防薬のCMも流れているのでもうご存知の方も多いかとは思いますが、やっぱりまだまだノミ・ダニで来院される方はいらっしゃいます。先日も岡山へ旅行したチワワが跛行で来院しましたが、趾間などにダニ2匹を発見しました。

(戸高アナ):『うちの子に限って関係ない、大丈夫』と思いがちですが、ノミ・ダニがくっつく可能性は結構あるということですよね。

(藤﨑):もちろんそうです。ノミ・ダニは予防することができますが、どの子もノミ・ダニがついてしまう可能性があります。特にマダニは犬猫はもちろんですが、人にも病気を媒介します。平成25年に日本で初めて見つかった重症熱性血小板減少症(SFTS)は先月もお隣の鹿児島県で死亡例が出ていて注意が必要です。一年中発症報告はありますが、圧倒的に4月から8月の感染報告が多いです。また人にはこの病気以外にも日本紅斑熱やライム病とよばれる病気がマダニ媒介性疾患としてあります。

(戸高アナ):この重症熱性血小板減少症は犬猫でも感染する可能性はありますか?

(藤﨑):犬で抗体価が上がっている(つまりSFTSウイルスをもつマダニに噛まれたことがあるという証拠)というような研究データは出ていますが、実際に発症した報告はありません。しかし犬にはマダニによって感染する別の病気で重要な病気があります。

(戸高アナ):どんな病気でしょう?

(藤﨑):バベシア症とよばれる病気でマダニが媒介する原虫が原因となる病気です。バベシアを体内に保有するマダニに吸血された際に、その唾液と一緒にバベシアという原虫が犬の体内に侵入し、その赤血球内に寄生します。マダニの吸着から約48時間で感染するといわれています。バベシアに感染した赤血球は壊されてしまうため貧血や発熱、黄疸といった症状が認められます。以前は九州での発生が主でしたが、温暖化の影響や交通の便がよくなり動物の長距離移動も行われるようになったことが影響しているのか、東日本まで感染地域が拡大傾向にあります。

(戸高アナ):治療することはできますか?

(藤﨑):治療法はありますが、薬の効果が出るまでに輸血が必要になったり、また薬も普段使用しているような薬と比較すると副作用のリスクを伴うような薬剤や高価な薬が必要になります。最悪命にも関わるような致死率の高い疾患の一つでもあります。

(戸高アナ):バベシア症の他にも病気を媒介することはありますか?

(藤﨑):マダニが媒介する病気としては、Q熱、ライム病、日本紅斑熱、野兎病などがあります。

(戸高アナ):猫に問題になる病気はありますか?

(藤﨑):猫で問題になるのは『ヘモプラズマ感染症(以前はヘモバルトネラ症)』です。猫ヘモプラズマ感染症は、病原体が赤血球へ寄生することにより赤血球の破壊が引き起こされ、溶血性貧血が発生する疾患です。 その感染経路は、ノミ・ダニによる吸血、猫同士の喧嘩による咬傷、および母子感染が考えられるが未だ明らかではありません。また、犬と猫両方で問題になるのが『瓜実条虫(サナダムシ)』です。これも瓜実条虫の幼虫をもつノミが口の中に侵入することで感染する消化管寄生虫です。人にも感染する人獣共通感染症で、特に小さなお子さんでは注意が必要です。

(戸高アナ):どちらも怖い病気ですね…とにかくノミ・ダニ予防できるものは予防してあげたいものですね。簡単に予防できましたよね?

(藤﨑):はい、簡単に自宅でできます。ノミ・ダニが寄生すると皮膚炎を起こしたり、寄生数が多い場合には貧血になったりと直接的な問題があるだけでなく、ノミ・ダニが媒介する疾患には重篤な疾患も含まれるため予防が大事になります。冬でも室内は暖かいので通年予防されるのをお薦めしていますが、特に夏場は発生が多く認められます。薬の種類によって多少異なりますが効果が1ヶ月~2ヶ月持続します。近所の草むらでも簡単に寄生してしまう可能性があるので月に1度フィラリアの予防薬と一緒にぜひ予防をしてあげてください。予防方法ですがスポット製剤や飲み薬タイプがあります。ホームセンターなどで売っている市販の製品ではなく、ノミダニ予防効果がしっかり確認されている動物用医薬品は動物病院で取り扱っていますので、効果がしっかりしているものをつけてあげてください。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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