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2015年6月5日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「熱中症」でした。

(藤﨑):今日は『熱中症』についてお話します。

(戸高アナ):暑い日が増えてきましたよね、ということは熱中症に気をつけなければいけない時期ということですよね。

(藤﨑):熱中症、日射病や熱射病などと呼ばれますが、全国的には6月~8月の発生が多いとされています。宮崎の場合だと全国平均よりも気温は高いですのでもう注意が必要ですね。

(戸高アナ):万一熱中症になってしまうとどういった症状が見られますか?

(藤﨑):1番分かりやすのは体温が高い状態になっているので体を触ってもらうと熱くなっているはずですが、呼吸器の症状も分かりやすいです。犬が運動をした後とか興奮したときなどパンティングとよばれる浅くて速い呼吸をしますが同じ呼吸が認められます。これは舌を出して唾液を蒸発させて体温を下げようとしています。正常だとしばらくすると体温は下がり呼吸も正常に戻るはずですが、熱中症では体温が下がらないのでヨダレが出始めます。また、猫が口を開けて呼吸する開口呼吸をするときはかなり呼吸状態が悪い指標になります。

(戸高アナ):猫も熱中症はありますか?

(藤﨑):猫は元々砂漠地方で生息する動物だったため、比較的暑さには強い動物ですが、熱中症になることはあります。呼吸以外の症状だと脱水症状に陥るため、呼びかけへの反応が悪くなったり、嘔吐・下痢、さらに痙攣、酸欠によるチアノーゼが認められます。最悪の場合、心拍数は減り、血圧が低下、呼吸不全、他臓器不全となりショック状態になり亡くなります。

(戸高アナ):熱中症というとやっぱり暑い日中に外に連れて行って起こるのですか?

(藤﨑):もちろん屋外で起こるケースもあります。直射日光の当たらない場所では27℃でも直射日光が当たるアスファルト上ではもっと気温が高くなります。人の高さの約150cm地点は31℃でも大型犬の高さの約70cmでは33℃、小型犬の高さの約30cmでは37℃になるという実験結果もあります。アスファルト上は46℃にもなり、裸足で散歩する動物の肉球はやけどしてしまいますよね。

(戸高アナ):そんなに気温が違うものなのですね。

(藤﨑):そうなんです。でも実は熱中症の発生報告が多いのは屋外よりも室内で、屋外が33%なのに対して室内は67%です。そもそも犬猫は肉球の裏に汗腺があるだけで人のように大量に発汗して体温を下げることができないため、熱中症になりやすいと考えられています。また動物は人と違って自分で喚起することや水が用意されていなければ水分補給できないため熱中症になりやすくなります。外での熱中症はイメージしやすいため気を付けますが、室内なら大丈夫といった油断からこのような結果になっているのではないかと推測されます。

(戸高アナ):そうですよね、室内ならそんなに気温は上がらないだろうと思いますよね…でも室内での報告があるので気を付けないといけないですね。

(藤﨑):多いのは窓を開け忘れてしまった、エアコンを入れたつもりが入っていなかった、思わぬ場所に動物がいて閉じ込めてしまった、水を用意し忘れていたなどさまざまな人為的要因があります。

(戸高アナ):特に注意が必要な子はいますか?

(藤﨑):発生が多いのは短頭種と呼ばれる犬種です。パグやF.ブルドック、ペキニーズなどマズルの短い犬種はそもそも鼻腔が狭く鼻呼吸の効率がよくないだけでなく、気道も狭いので熱発散効率も悪い犬種です。飛行機に動物乗せることができますが夏場は短頭種の犬種は乗せてもらえないくらい熱中症の発生が多いのでこれらの犬種では他の犬以上の注意が必要になります。猫ではペルシャやヒマラヤンなど鼻腔の狭い品種で注意が必要です。他にも寒い地域原産の品種で被毛が密着していて熱がこもりやすい品種や体温調節能の低い幼齢動物や老齢動物、肥満動物、興奮しやすい動物でよく見られます。心臓病や腎臓病、癌などの持病を持っている動物でも特に注意が必要です

(戸高アナ):うちのブヒちゃんは要注意ですね!!

(藤﨑):熱中症にならないようにするには空調管理をしっかりする。自由に水分補給できるように新鮮な飲み水を用意するということが必要です。エアコン以外にもクールマットなどグッズもあるので活用するのもいいですし、凍らせたペットボトルにタオルを巻くなどの工夫で家にあるもので代用することも可能です。外飼いでは風通しのよい日陰に小屋を用意するなど十分な対策が必要です。

(戸高アナ):もちろん熱中症にならないようにすることが大事ですが、もしなってしまった時はどうしたらいいですか?

(藤﨑):まず何より冷やすことが必要です。水で全身を濡らして冷やしながら、動物病院へ連絡してください。冷たすぎるとかえって血管は収縮してしまい表面ばかりが冷え、効率が悪くなってしまうので浴槽につけて水で全身を濡らして扇風機で風を送るといいでしょう。意識がしっかりしている場合には水を飲ませます。意識がはっきりしない場合などは気道を塞がないように注意しながらすぐに動物病院を受診してください。回復して外見は元気に見えても内蔵にダメージがある場合もあるのでかかりつけの動物病院に相談してください。

(戸高アナ):防げるものはしっかり予防してあげたいですよね、気温も上がってきていますので注意してあげてください。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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