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2015年10月9日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「あなたの犬猫が癌になったら…後編」でした。

(藤﨑):前回に引き続き、あなたの犬猫ががんになったら… 今回は化学療法についてお話します。前回腫瘍になってしまった場合にどんな治療ができるのかということで外科手術や放射線治療についてお話しました。

(戸高アナ):どういった場合に化学療法が適応になるのでしょうか?

(藤﨑):腫瘍のなかでもリンパ腫や白血病といった血液の腫瘍の場合には手術で切り取るというわけにはいかないですし、放射線を全身に当てるということはできないので化学療法を行うということになります。また手術を行ったけれどもマージンを確保できなかったという場合にも再発を抑える目的で化学療法を実施します。

(戸高アナ):抗がん剤というとやはり気になるのが副作用ですよね。

(藤﨑):すべての抗がん剤には副作用の可能性があります。重篤な副作用の発生頻度は5%以下であると言われています。また副作用で化学療法を継続できないという場合もあります。

(戸高アナ):動物も毛が抜けてしまいますか?

(藤﨑):これは診療中によく聞かれる質問ですが、多少の脱毛や質感の変化はありますが人のように毛がすべて抜けるということはほぼありません。しかし、ヒゲなどの太い毛は抜けてしまうことが多いですが、特に日常生活に影響はありません。その他の副作用としては、血液中にある白血球という身体の中に入ってきた病原体と闘う血液の成分がありますが、白血球が減少するような副作用が認められることがあります。感染症と闘う免疫力が低下している状態のため、減少しすぎている場合には抗がん剤が投与できなかったり、抗生物質を飲む必要が出てくる場合があります。
その他嘔吐などの消化器症状や食欲減退などの副作用が認められることがあります。薬の種類によっては点滴で投与しますが血管から漏れてしまうと皮膚が壊死してしまうため慎重に投与しなければならないものもあります。どの抗がん剤を使うか、どういう使い方をするのかを決めるのにも腫瘍の種類によって変わってきます。またその他に薬の種類によっては膀胱炎や何度も使い続けると心筋炎が起きるなどの副作用があります。

(戸高アナ):なるほど、薬はどれもそうですが副作用があるのが心配ですよね。

(藤﨑):従来の化学療法では完全治癒、腫瘍細胞を死滅させることを最終目標とし抗がん剤を投与してきました。しかし近年新しい考え方の化学療法が注目されています。低用量の抗がん剤を長期間反復するメトロノミック化学療法という方法で、腫瘍が大きくなるために必要な血管を作らせないようにする方法で腫瘍細胞を死滅させることはできませんが、休眠状態にすることで延命やQOL(生活の質)を改善することを目標としています。抗がん剤の量が少ない分、副作用が少ないのがメリットです。

(戸高アナ):効果はどうでしょうか?

(藤﨑):人での研究報告によると、軟部組織肉腫と呼ばれる悪性腫瘍の人で腫瘍が小さくなったもしくは腫瘍が大きくならなかった人が約70%という報告があり、副作用の症状が認められたのは約8%だけだったという報告があります。また犬でのデータでは外科手術を行ったが腫瘍細胞が取りきれなかった、つまり腫瘍細胞が残ってしまった犬でメトロノミック療法をした群としなかった群ではメトロノミック療法を実施した群の方が生存期間長かったという結果も出ています。食欲不振などの軽度の副作用は認められていますが、重度の副作用は約3%だけという結果でした。
 外科手術で完全切除ができるというのがやはり1番いい治療法なのですが、部位によっては完全切除ができない、年齢や心疾患などで手術が難しい症例で抗がん剤の副作用のリスクを避けたい場合にこのメトロノミック療法が適応になります。

(戸高アナ):手術ができない場合に新しい選択肢ができたということですね。

(藤﨑):まずは腫瘍の種類を知る必要がありますし、手術で完全切除できるのであれば手術したほうが生存期間は長くなります。また腫瘍の種類によっては従来の化学療法がよく効くものもあります。その判断は慎重にしなければならないのですが、選択肢が広がったというのはいいことですよね。

(戸高アナ):治療についてお話してもらいましたが、腫瘍になったときに家庭でできることは何かありますか?

(藤﨑):さまざまな情報がインターネットで簡単に手に入りますが、正しい知識を持ってできるだけ多くの時間を一緒に過ごすために最適な治療を探していくことです。また十分な栄養も余命の延長やQOL(生活の質)を向上のほか、化学療法の効果を高めたり副作用を抑える効果があります。また、普段の様子が一番分かるのは飼い主さんです。眠れているか、痛みはないかといったちょっとした行動の変化が治療の情報として有用になります。最善の方法はその子によって異なります。あらゆる方法のメリットデメリットを十分考えて最善の方法を見つけてあげたいものですよね。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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