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2015年11月6日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「前十字靭帯断裂」でした。

(藤﨑):今日は犬の前十字靭帯断裂の外科手術についてお話します。

(戸高アナ):前十字靭帯断裂とはどんな病気ですか?

(藤﨑):前十字靭帯は膝にある靭帯で、前十字靭帯断裂つまり前十字靭帯が切れてしまうことですが、跛行を主訴に来院した犬の約20%で認められるといわれるほどよく認められる病気で、特に大型犬での発生が多い病気です。人でもありますが、人ではスポーツをしているときなどの外傷性断裂が多いのに対して犬では靭帯の変性が関与していることも多いとされています。

(戸高アナ):バレーボールの選手がケガをしたというときにそういえば聞いたことがあります。犬でもあるのですね…

(藤﨑):大型犬に多いとされていますが、実際は小型犬でも認められることがしばしばあり、小型犬に多い膝蓋骨内方脱臼との併発も多く見られます。

(戸高アナ):どういった症状が認められますか?

(藤﨑):跛行といって歩き方がおかしくなることで気付きます、前十字靭帯断裂だと痛みのため足を着地せずに3本足で歩いたり、体重をかけられずに引きずるように歩くこともあります。また不完全な断裂や慢性的な断裂では間欠的な跛行を認めることがあります。

(戸高アナ):診断はどのように行いますか?

(藤﨑):足を触ることで分かります。前十字靱帯は膝の部分にある靭帯で脛骨(スネの部分の骨)と大腿骨(太ももの骨)を安定化させる役割があります。前十字靭帯断裂ではこの靭帯が切れてしまっているもしくは場合によっては伸びてしまっているため不安定性が出てきます。その他レントゲン検査を行い、関節炎がないかどうか他の以上がないか調べます。

(戸高アナ):治療はどうしたらいいのでしょうか?

(藤﨑):治療は体重が大きく関与してきます。体重が10kg以下の場合にはケージレストの安静や抗炎症薬の投与での保存療法でよくなることがあります。しかし、体重が重い大型犬ではこの方法では改善しないことが多くなります。そもそも肥満傾向の犬では膝にかかる負担が大きくなることから前十字靭帯断裂を起こしやすくなるとされていて、両側の前十字靭帯断裂は肥満犬で多いというデータもあります。

(戸高アナ):安静や薬で治らないということは手術が必要になりますか?

(藤﨑):大型犬の場合や小型犬であっても保存療法で改善が認められない場合には手術をすることができます。手術の方法ですが、一番昔から行われているのは人工素材で前十字靭帯の代わりをするように脛骨と大腿骨に糸をかけて結ぶという方法です。この方法での成功率は90%と高いですが、術後も安静にしておく必要があります。

(戸高アナ):いくら賢い犬猫でも安静というのは難しいですよね…

(藤﨑):新しく行われるようになってきている前十字靭帯断裂の治療が脛骨高平部水平化骨切術(TPLO)と呼ばれる方法や脛骨粗面前進術(TTA)と呼ばれる手術法になります。どちらも力学的な考え方で負重時に発生する脛骨の前方へ出ようとする力を制限するために脛骨を切り、プレートを入れる手術になります。以前から行われている手術と同等もしくはそれ以上の成功率という報告があります。また昔から行われている方法のデメリットで再発しやすいという問題点がありましたが、この方法だと再発率が低いというメリットがあります。この方法ですが1990年代に開発された方法ですが、特許がかかっていたということから小動物臨床へ普及していませんでしたが、特許がきれたことがきっかけとなり近年その治療成績の検討が行われてきています。

(戸高アナ):人と同じく動物の医療も研究、開発が行われているのですね。

(藤﨑):関節鏡という技術も用いられるようになりつつあります。腹腔鏡は聞いたことがあるかと思いますが小さい傷口からスコープをいれてお腹を大きく開かずに中の様子を見ることができ手術もできる方法ですが、同じようなことが関節でもできるようになっています。前十字靭帯断裂では半月板損傷を起こしていることも多いですが、関節鏡を同時に行うことで断裂した靭帯の状態と半月板の状態も確認することができます。

(戸高アナ):犬猫だと足も小さいので大変そうですね。

(藤﨑):そうですね、関節も小さいため限界があるのも事実です。まだ実施できる機関は限られていますが侵襲性が低いというのが最大のメリットです。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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