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2016年3月18日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「フィラリア症」でした。

(藤﨑):今回は基本的な病気をおさらいしようということで「犬のフィラリア症」についてお話します。フィラリア症というともうこのラジオでも何度も話題に出てきましたので理解されている方も多いと思いますが、どういう意味があるのかよく分かっていないけどとりあえず動物病院で言われるから飲ませているという方も実はまだ多いのが現状です。また昨年ノーベル賞生理学医学賞を受賞された大村智さんが発見したイベルメクチンという薬ですが、この薬はアフリカなどで人が失明してしまう可能性があるオンコセルカ症という病気の治療薬として使用されている他、獣医学分野でもフィラリア症の予防薬として広く使用されている薬なのです。

(戸高アナ):2億人を救った薬というような報道もありましたよね、てっきり人だけの薬かと思っていましたが、フィラリアの予防薬だったんですね。フィラリアの予防をした方がいいというのは浸透してきていますが、ではなぜ予防しないといけないのか?そもそもフィラリア症ってどういう病気なの?ということについて今日はお話してください。

(藤﨑):フィラリア症という病気は心臓や肺動脈内に寄生する犬糸状虫が引き起こす疾患で、蚊が媒介します。そのため屋外飼育で感染する確率が高くなりますが、室内飼育でも感染するリスクはあります。熱帯から温帯にかけて世界的に広く蔓延する寄生虫で暖かい地方の疾患、特に九州では多いと考えられていましたが、温暖化の影響で最近では寒冷地である北海道旭川市や本州高原地帯でも見られています。

(戸高アナ):蚊がいる場所では感染する可能性があるということですね。うちの子に限って大丈夫と考えてしまうこともあるかと思いますが、、、

(藤﨑):厳密には環境中にフィラリアを持った蚊がどのくらいいるかということに影響されるのですが、あるデータでは予防処置をせずにひと夏過ごした犬の約14%、ふた夏経過すると約90%になるという結果があります。感染している犬の体内では成虫が産出したミクロフィラリア血液内に存在しています。蚊がこの感染犬を吸血する際にミクロフィラリアは蚊の体内に侵入します。蚊が吸血行動を開始するのが15℃というデータがあります。また蚊の体内でミクロフィラリアが成長するのですが、この時にも18℃を超える必要があるというデータもあります。蚊が次の犬に吸血した際にこの成長した感染子虫とよばれるものが新しい犬に侵入し感染が成立してしまいます。体内に侵入した感染子虫は数ヶ月かけて成長し、最終的に肺動脈で5年ほど生きます。

(戸高アナ):なるほどこのため予防する期間が決まっているわけですね。では感染するとどういった症状がでますか?

(藤﨑):症状はさまざまです。軽度の場合では無症状ですが、咳や運動不耐性、体重減少などの症状が見られ始めます。重度の場合には呼吸困難、喀血、失神、腹水などの症状が見られます。多くは肺高血圧症へ移行し慢性経過を辿りますが、中には急性の血色素尿や呼吸困難、虚脱などを呈する症例もいます。大静脈症候群とよばれますが、右心房から右心室にかけてフィラリアが移動するため血液の流れを阻害したり、三尖弁閉鎖不全症を起こすため右心不全となり数日で致命的になる病態もあります。

(戸高アナ):こういった状態にならないように予防しているのですね。

(藤﨑):そうです!フィラリア症は適切な投与量、投与期間が厳守されれば100%予防できる疾患です。体の中に入ってきた感染子虫を駆虫するお薬を毎月のませているわけです。そのため蚊を見かけ始めてから蚊を見なくなった1ヶ月あとまで飲ませるというのが肝心です。最近では毎月飲ませるお薬や背中に垂らすタイプ、注射を打つと半年や一年間効果で出るといった薬が開発されており、動物病院で処方することができます。

(戸高アナ):今まで飲ませていなかったという方は今年はしっかり予防したほうがいいですよね?

(藤﨑):予防してもらいたいのですが、急に始めるのはかえって危険です!!先程の話に出てきましたが予防せずにひと夏を過ごすと約14%は感染してしまうというようなデータがあるため、もしかすると感染している可能性があります。万一感染している場合に予防薬を飲ませてしまうと血液中のミクロフィラリアが急激に死滅し、流涎、吐き気、頻脈、など全身的な副作用が見られます。重症の場合にはショックで死亡してしまうこともあるため検査して感染していないことを確認する必要があります。

(戸高アナ):これから暖かくなってきます。宮崎の場合ですと4月から12月の予防でしたね。今年はしっかりとフィラリア症について理解してから予防を始めてください。詳しくはHPをご覧ください

文責:獣医師 藤﨑 由香

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