犬猫の健康診断の検査項目についての見解(私見)なんですが、趣意は、
例えば、小型犬種による僧帽弁閉鎖不全疾患、猫の場合の心筋症や尿結石症など、それぞれの犬種などによって罹患する可能性の高い疾患は、なるべくその有無を探ることが必要でしょう。何事も先入観が先行するのはやや問題がありますが、好発疾患に関してはむしろその逆でしょう。これは人での高血圧や糖尿病などと同様に考えてもよいかもしれません。かつ、今の獣医療レベルでその有無や程度を把握することは、それ程困難ではありまん。以下、つれづれに思考していることを書き連ねてみます。
<視診・聴診・(腹部)触診>:
①心雑音の有無と程度は、小型犬に多発する僧帽弁閉鎖不全の早期発見と投薬開始の判定に重要です。不整脈は心疾患存在の追及に役立ちます。
②体表の腫瘤などは飼い主が発見して来院することが普通ですが、院内の触診で見つかることも少なくありません。犬ではリンパ腫も多いことから、体表シンパ節の触診も重要です。
③腹部触診では腫大した脾臓や肝臓、委縮した腎臓、膀胱結石などを触知することができます。腹腔内腫瘍や腸管の腫瘍を発見することもあります。
④犬では口腔内腫瘍が多く見られますし、ネコでは口内炎が多発しますから、口腔内の視診も欠かせません。
<血液検査>:
①犬猫の死因のワースト3のなかに腎不全があります。腎機能値の異常を早期に発見し、その後の食餌療法などを実施することでかなりの延命が可能です。
②肝臓機能の異常も、その原因と早期の治療開始には重要です。最近増加している肝臓腫瘍やクッシング症候群、胆泥症などの手掛かりとなります。
③血糖値の上昇は糖尿病の予備群の発見に重要です。
④コレステロール値の上昇は犬の甲状腺機能低下症のルールアウトに必要でしょう。
⑤血中ナトリウム値の低下と血中カリウム値の上昇はアジソン病(副腎皮質機能低下症)の診断に、血清タンパク(アルブミン)値の低下はリンパ管拡張症など蛋白漏出性腸炎の診断に重要です・・・・・・が、これらの検査は何らかの臨床症状が見られてから実施するのが一般でしょう。
<特になし>:
①「健康診断でひとつだけ検査を受けるとしたら何を選びますか?」との問いに、お医者さんが応えたのが「特になし」であったように、犬猫でも「ひとつだけ選べ」となったら、「特になし」となるかもしれません。
<超音波検査>:
①聴診や触診、血液検査で異常が見られたら、超音波検査が勧められます。保定は必要ですが、検査自体は非侵襲ですから安心です。
②仮に血尿の症例で膀胱を診る場合、同時に腎臓(腎結石・腎盂拡張・腎囊胞など)と尿管のチェックもしましょう。どうせならのついでで、肝臓や脾臓もチェックしましょう。
③それならば、心臓の弁と心筋の厚さも調べましょう。
<レントゲン撮影>:
①仮に腹部に腫瘍(腫瘤)があって肺転移を確認する場合とか、手術前提で術前情報をより多く入手するにはレントゲン撮影が必要です。
②しかし、健康診断でいきなりのレントゲン撮影は一般的でないでしょう。
以上、一田舎の一町医者(獣医)が、町医者レベルでできることで、常々考えていることを書き連ねてみました。参考になれば幸甚であります。