先週ニュースで取り上げられましたが、国内で初めてコリネバクテリウム・ウルセランスに動物から感染し、60代女性が亡くなっていたことが分かりました。
この病気は感染した動物から人にも感染するため、心配されている飼い主さまも多いかと思いますが、抗菌薬による治療が有効であり、人から人への感染は報告がないため、冷静な対応が求められています。しかし、皮膚潰瘍や風邪様の症状を呈する動物との過度な接触は避け、手洗いの徹底など注意が必要です。
コリネバクテリウム・ウルセランスはジフテリア菌と同じコリネバクテリウム属に分類される細菌で、コリネバクテリウム属には25種以上の菌種が含まれ、自然界には多く存在しています。コリネバクテリウム・ウルセランス感染症は人、犬、猫、牛のほか様々な動物において感染事例が確認されており、犬や猫では咳やくしゃみ、鼻水など風邪と似た症状や皮膚や粘膜の潰瘍などを呈することが知られています。人では国立感染症研究所で感染を確認している症例が2001年から2017年までに25例あり、初期には風邪に似た症状を示し、重篤な場合には呼吸困難等の症状を呈し、今回の事例のように最悪死に至ることもある疾患のようです。
診断するためにはコリネバクテリウム・ウルセランス菌を培養同定する必要があります。先述のようにコリネバクテリウム属は多くの菌種を含むため慎重な判断が必要になります。治療は抗菌薬が有効とされています。犬、猫でも感染の有無は診断可能ですが、先ずは獣医師へご相談ください。
文責:獣医師 藤﨑 由香