症例41
8歳マルチーズ雄
約3週間前からの間欠的血尿と頻尿を主訴に来院。
エコー検査にて膀胱に腫瘤(乳頭状有茎性)を認める。BRAF遺伝子変異検査(移行上皮癌もしくは前立腺癌の場合には変異が認められることがある)は陰性。
尿管と膀胱腫瘤の位置関係を精査し、切除可能かどうか判断するためにCT検査を実施。膀胱壁の明らかな肥厚は認めず、尿管開口部と腫瘤辺縁との距離もあり、開腹による外科的切除が可能と判断したため、可能な限りの膀胱部分切除を実施。
病理組織学的検査結果により「移行上皮癌」と診断された。
※人の膀胱腫瘍の診断と治療には膀胱鏡が第一選択であるが、犬での応用(とくに小型犬)は現状、一般的でない。
※人の膀胱癌も多くは移行上皮癌であり、膀胱壁(膀胱平滑筋層)に浸潤しているか否かが治療法や予後に大きく関係する。筋層まで広がっている場合(筋層浸潤性膀胱癌)には、基本的に膀胱全摘出と尿路変更術を行う。
※本症例では、CT検査によって、①膀胱壁への浸潤の可能性が低かったこと、②隣接臓器を含め明らかな転移像を認めなかったこと、③膀胱鏡の応用(経尿道的膀胱腫瘍摘出術=TURBT)が不可能であったことから、可能な限りの膀胱部分拡大切除術を実施した。
本症例の切除した組織検査では、筋層(膀胱壁)以下への浸潤や明らかな脈管浸潤、かつ外科的切除縁への浸潤も認められなかった。