放送は12日(土)が午前10時30分、午後2時30分、午後8時30分の3回、13日(日)が午前9時、午後4時、午後9時30分の3回、計6回です。
猫の避妊手術と去勢手術について
内容 避妊手術(卵巣・子宮を全部摘出する手術)はすべきなのか?また、いつ行うべきなのか?
避妊手術のメリットとは?
●乳腺腫瘍の予防効果
★雌猫に多い腫瘍は、多いものから順に造血系の腫瘍、皮膚の腫瘍、乳房の腫瘍(全体の17%)となっている。
★猫では悪性度が高く、少なくとも85%が悪性であり、その80%以上が死亡時に他の臓器への転移が見られる。
★重要なことはこの乳腺腫瘍の発生率はホルモンに強く影響され(性ホルモン依存性という)、避妊手術によって乳腺腫瘍の発生率は大きく低下する、ということである。
★猫では6ヶ月齢までに避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生率はおよそ7分の1にまで減少し、2歳(文献によっては6歳)になる前までに手術を行うと乳腺腫瘍の発生率が低下する。より最近の研究では、6ヶ月までに避妊手術を行うと91%、1歳までに避妊手術を行うと86%も乳腺癌のリスクが減少するという。
★★その他、避妊手術は子宮蓄膿症(犬に比べ、若齢で発症し開放性の場合が多い)、膣過形成や膣脱、子宮・卵巣・膣の腫瘍、乳腺過形成などの疾患を防ぐことができる。
病気の予防以外にメリットは?
★猫は多発情動物でその上交尾後排卵である。その為、非常に妊娠しやすい。望まれない妊娠を防ぐためには早期の避妊手術が望まれる。猫の初回発情は平均7ヶ月(早いものでは6ヶ月)、体重2.3~2.5kgに達したときに認められ、雄猫に比べ1~2ヶ月も早い。
避妊手術のデメリットは?
★避妊手術の「罪」は「肥満」である。その原因として、①エストロゲンが中枢性(脳に作用して)に食欲を抑制している、②ホルモンが細胞内代謝に影響している、③避妊手術により活動量が減る、などが考えられているが、今尚、不明である。
(まとめ)
★★乳腺腫瘍の予防の為、早い時期での避妊手術がベストである。乳腺腫瘍はその大きさと予後に密接な関わりがある。日頃からスキンシップを大切にして、嫌がらずに体表のチェックが可能な状況にしておくことが重要である。
★★望まれない妊娠を防ぐためにも避妊手術を行おう。
去勢手術のメリットとは?
★猫の場合、犬のような前立腺肥大や精巣腫瘍といった病気の発生はまれである。また、潜在精巣であっても、精巣腫瘍の発生は稀である。そのため、病気の予防という意味で去勢手術を積極的に勧めることはない。
★しかし、未去勢の雄猫では外に出たがったり、トイレ以外でおしっこをする(スプレー)、ケンカをするなどの傾向がどうしても強くなる。ケンカにより猫エイズなどの病気の感染の危険性が高くなる。
★また、先に述べたように、発情回数が多くその期間も長い。しかも交尾後排卵(人や犬では交尾と排卵日は関係ないが、猫では交尾刺激により排卵する)のため、かなり容易に妊娠する。そのため、仮に脱走してしまった場合、数ヶ月後には「うちの太郎によく似た子猫が歩いている、、、」といったことになってしまう。
★そして、よくある質問だが、雄に多いスプレー行為は去勢手術により予防することができるのか。これらの行動が身につく前に去勢手術を行うと、当然予防の効果が高いのだが、一度これらの行動が身についてしまった後では、軽減する例もあるが、効果のまったく見られないケースもある。去勢手術を受けるかどうかは、出来れば動物を飼う前から決めておくことが望ましい。
※※※以下の問題行動が去勢手術によって何ら改善されなかった割合を以下に示す(ある論文のデータより)。
◎猫:外をうろつく(6%)、ケンカ(12%)、スプレー(13%)。
また、スプレー行動は、屋外で色々な匂いを嗅ぐなどの環境の変化(新しい犬・猫の存在など)により再発しやすいとされている。
去勢手術のデメリットは?
★避妊手術と同様、去勢手術のデメリットは肥満である。その機序は明らかになっていないが、去勢手術後の必要(基礎代謝)エネルギー量は減少し、食欲は増進される為に肥満が起こる。例えば、猫では安静時の基礎代謝エネルギーが20~25%も低くなる。給餌量を調節し、肥満には十分注意したい。
<まとめ>
●去勢手術は、雄に多い問題行動の予防と、かつそれを軽減する。
●望まない妊娠を回避し、地域猫増加の抑制に貢献する。