仔イヌ、仔ネコを飼うようになったら、最初の1週間前後は家族や家に慣れて貰う事が大切です。下痢や嘔吐、発咳、食欲不振、低血糖による痙攣発作など特に問題が無ければ、病院に行くことは控えるべきです。病院では、検査や処置、予防接種などで相当のストレスに曝されます。来院というストレスにより、潜在していた咳や下痢などの病原体が頭をもたげ、逆に病気を顕在化(発症)させ得るからです。
特に、飛行機で県外より購入した動物に関しては、購入後のトラブルを極力避けるため、ワクチン接種済や消化管内寄生虫の駆除の確認を確実に行うことが必須です。
英国では生後3ヶ月以内でのイヌ、ネコの販売が法的に禁止されています。これは動物のしつけ(動物の親が仔に行うしつけ)の観点と、病気の問題を考えてのことです。動物は生後満3ヶ月が経たないと肝臓でのグリコーゲンの蓄積ができない為、種々の原因で食餌が摂取不可能な場合、簡単に低血糖に陥り、死に至るケースも少なくありません。さらに重大なことは、幼犬が何らかの病原体に暴露された場合、その免疫力(抵抗力)の未熟性から、呆気なく死亡することも多々有ります。要はペットを購入する場合、可能な限り3ヶ月齢以上で、ワクチン接種・駆虫済みの動物であることを確認しましょう。県外より購入する場合には獣医師の健康診断書が有れば安心できるでしょう。
仔イヌ、仔ネコが家に来て1週間が過ぎたら、初めての来院となります。以下に「たばる動物病院グループ」で実施しているチェック項目と説明事項について示します。
①体重・体温の測定、聴診、触診、皮膚の状態、歯並び、外耳道など全身状態のチェック:心雑音が聴取されると重大事であり、心奇形の有無を精査しなくてはなりません。外部寄生虫である蚤や皮膚疥癬、特に耳疥癬は少なくありません。咬合不整や乳歯遺残もごく普通に見られます。
②水頭症のチェック:パグ・チワワ・ヨークシャーテリア・シーズー・ポメラニアンなどの短頭種では、超音波検査による脳室の大きさのチェックが欠かせません。
③糞便検査:回虫・鞭虫・鉤虫などの消化管内寄生虫、コクシジウム・ジアルジア・トリコモナスの原虫、カンピロバクター・ウエルチなど悪玉菌の病原体を顕微鏡で調べます。ペットショップを介した仔イヌの殆どは、これらのうち一つ以上の病原菌を保有しています。これらの病原体はワクチン接種により急激に増殖することが少なく有りません。
④一般血液検査:当院ではワクチン接種の前には全頭に無料での一般血液検査を実施しています。貧血・白血球の増減・血小板の減少が存在した場合、ワクチン接種を見合わせることもあります。
⑤家での動物のケア:家で最低限すべきことについて指導しています。爪切り・肛門嚢絞り・耳洗浄などの方法を丁寧に教えます。
⑥しつけ、給餌、散歩について:マズルコントロール・マウンティングなどイヌ本来の本能を利用したしつけ法などを教示します。無駄吠えや分離不安症、権勢症候群などの予防・防止策についても説明します。肥満の度合、フードの種類や給餌の方法についても分かり易く説明します。ゴールデンやラブラドールなどの大型犬種では、股関節形成不全症予防のため、運動制限や給餌の制限などが必要です。その他、ダックスフントの椎間板ヘルニアなど、犬種によって特異性の疾患があります。これらの発症予防に関しても詳しく説明致します。猫白血病や猫エイズ、交通事故死、咬傷防御のための「ネコの外出は禁物」の理由も述べます。
⑦フィラリア予防、ワクチン接種、ノミ・ダニの駆除について:イヌを飼う上での最も重要で大切なことはフィラリア寄生の予防です。実物の虫体を見せてフィラリア症の恐ろしさを示します。ダニは俗称「ピロ」という貧血で死に至らしめる病原体を媒介します。ノミは「猫引っ掻き病」を惹き起こす病原菌を保有しています。ワクチンに含まれているレプトスピラ症はヒトにも伝染し、「宮崎の風土病」とも言っていい病気です。これらについても懇切・丁寧に教示します。
初診時、特に外耳炎や皮膚病などの病気をもっているペットの場合には、「説明」に約1時間を要することも少なく有りません。余裕をもって来院いただければ幸甚です。また、「しつけ」や「病気」の説明が多々ある為、家族揃っての来院が望ましいと思われます。
30年前のペットの寿命は5~6歳、長生きでも7~8歳でした。今や15年以上生きるペットもごく普通に見られます。若齢でしかも予防もしくは防御できる病気でペットを失うことは、本当に忍びない事です。何事も「最初が肝心」です。皆様の御来院を心よりお待ち申し上げます。