ナメクジ駆除剤の誤食に要注意!!
イヌとナメクジ。このふたつを見て何を思い浮かべるでしょう?サルとイヌならわかるけど、ナメクジ???と思っていませんか?一見なんの関係もないように思えるこの両者ですが、実は大いに関係があるんです。ナメクジが増えるこの梅雨の季節、犬にとってナメクジはこわ~い存在になるかもしれませんよ。
昔、小学校の帰り道、小枝でつつきながら実験したように『ナメクジには塩!』と考えている方もいるでしょうが、まさか庭中に塩をばら撒くわけにはいきませんね。いまは、ナメクジがお家の庭に増える時期。これには市販のナメクジ駆除剤を撒く方が多いようです。しかし、このナメクジ駆除剤には有害物質が含まれていて、イヌが摂取した場合、重篤な中毒症状を起こすことが分かっています。
これはメタアルデヒド中毒といい、様々な症状を起こし、死に至ることもある怖い中毒です。
<主な症状>
・頻脈 ・チアノーゼ
・流涎(ヨダレ) ・下痢
・過呼吸 ・運動失調
・ケイレン ・脱水 etc…
この中でも特に飼い主にも分かりやすい症状は、ケイレン(痙攣)とヨダレ(流涎)だと思います。このような症状が見られたときはすぐに動物病院に連絡することが大事です。これらの症状は摂取後3~5時間後に現れるのが一般的ですが、もっと早く症状が出る場合もあります。
当たばる動物病院グループでも、6月に一例メタアルデヒド中毒のイヌが、夜間救急病院に運びこまれました。来院時には激しいケイレンと過呼吸、そして大量の流涎を呈しており、明らかな中毒症状を起こしていました。速やかに全身麻酔下にて胃チューブを挿入し胃洗浄を行うと同時に、抗ケイレン薬でケイレンを鎮め、点滴留置と利尿剤で体液を入れ替える治療を行いました。この結果、3日後には無事回復することが出来ました。
この種の中毒には、まず胃内の残留物質の除去を図ることが第一選択です。嘔吐する場合も有りますが、発作が見られる時には無理に吐かせるのは禁忌です。もし体内に入ってしまったなら、それ以上の体への吸収を抑えるために胃洗浄を行います。この症例においても、胃洗浄により、胃内に残ったナメクジ駆除薬の粒を大量に排泄させることに成功しました。
メタアルデヒド中毒の治療法には、このほかに活性炭の内服で毒物を吸着させ吸収を抑える方法や、メトカルバモルという薬で震えと発作を抑える方法などがあり、症状と程度にあわせてこれらの治療を行います。
さて、難しい話が続きましたが、結局このようなことにならないためには、
1.駆除剤を撒いた庭にイヌ出さない。
2.不用意に机の上に置いたり、引き出しにしまったりしておかず、イヌの手が届かない場所にしまう。
3.食べるのを見かけた、または荒らされた跡があるときはすぐに動物病院に電話をかける。
以上のことが大切です。
なんだか結局のところ塩で退治するのが一番良いように思えてきましたね。。。
梅雨もたけなわです。お宅にイヌとナメクジのコンビがいるご家庭は十分注意してお過ごしください。そしてそのほか中毒を起こす除草剤や農薬の管理にも十分気をつけてくださいね。
次回はこれからの季節の主役、フィラリア症についての特集です。
お楽しみに。
文:小川篤志