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ペット豆知識No.65-「ミニチュアダックスフントによく見られる疾患・その1」-MRTラジオ「ペット・ラジオ診察室」3月25日放送分

 今回からしばらく「犬種別に多い疾患」について述べる。1回目の今回は、散歩している姿を見かける機会も多いだろう、人気ナンバーワン犬種「ミニチュア・ダックス」についてである。
 
1.ミニチュア・ダックスに多い疾患としてまず思いつくのが椎間板ヘルニアだろう。
●椎間板ヘルニアについては以前も述べているが、大切なのは「早期の治療」である。一刻を争う緊急疾患である。帰宅すると愛犬の後肢が立たない、という場合には次の日まで待たず、早急に来院したい。また、時間の経過とともに徐々に進行していく場合もある為、軽症の場合でも油断できない。
●症状はその重症度によりⅠ~Ⅴまでに分類され、Ⅰ:背部疼痛のみ、Ⅱ:ふらついて歩く、Ⅲ:麻痺により歩行困難、Ⅳ:排尿困難、Ⅴ:深部痛覚消失となる。
●治療には内科的治療(投薬)あるいは外科的治療があり、Ⅳ度以上になると手術適応を考える必要がある。内科治療は発症後8時間以内、外科治療は48時間以内の治療が望ましい。いずれにしても、早期治療とその後の強烈なリハビリ「カギ」となる。

※脊髄の損傷が激しい場合、脊髄が徐々に壊死し、呼吸困難に陥り死に至る脊髄軟化症」になる場合がある。確率的には20~30頭に1頭で脊髄軟化が起こるようだ。椎間板ヘルニアは死に至る危険性のある疾患なのだ。小太りさんの飛び跳ねは禁忌である。

2.会陰ヘルニア
●会陰ヘルニアとは、尾骨筋、肛門括約筋、肛門挙筋、内閉鎖筋といった骨盤隔膜を構成する筋肉が脆弱化し分離することで、脂肪、膀胱、直腸などが会陰部皮下に脱出する疾患である。男性ホルモン(アンドロゲン)が関与しており、その多くは5歳以上の去勢していない雄犬に発生し、雌犬で発生することは稀で、まずない。
●症状は会陰部の腫脹、排便困難排尿困難などであるが、ミニチュア・ダックスの場合、会陰部の腫脹は分かりにくいことが多い。そのため、排便困難、排尿困難といった症状が見られた場合は病院で診てもらおう。
●診断が遅れてしまうと筋肉の萎縮が進み、ヘルニア孔(穴)が大きくなる。少しずつ進行してしまうのだ。そのため、このヘルニアも早い段階での治療が大切である
●会陰ヘルニアの治療法は基本的には外科的にヘルニア整復術を実施する。また、男性ホルモンに関連しているため、同時に去勢手術を行う。

3.鼠径ヘルニア
●症状としては下腹部(鼠径部)に膨らみが見られ、ヘルニア孔より脂肪や腹腔臓器が出てくる。先天性、外傷性などの原因がある。
●ヘルニア孔の大きいものや、かん頓しているものでは手術が必要となる。
※かん頓:腹部臓器などがヘルニア孔から脱出したまま元の位置に戻らなくなった状態のこと。鼠径部に腫れや痛みを伴う。
※会陰ヘルニアや鼠径ヘルニアの犬では、肥満・吠える等により腹圧が上昇し、脂肪や腹部臓器の脱出を促す。

4.癲癇(てんかん)
●これも以前述べているが、犬では特発性癲癇が多い。特発性癲癇とは、原因不明の癲癇のことで、CT検査やMRI検査、病理組織検査により異常を認めない。脳波検査では癲癇脳波を検知できる場合がある。1~5歳で発症することが多い。
●癲癇は典型的は症状は全身性の痙攣、流涎などが挙げられるが、癲癇には飼い主さんが気付きにくいものもある奇声を発する、ふらつく、震える、咳込む、顔を引き攣る、片方の前脚だけ挙げる、などといったものも含まれる。目撃した場合は、落ち着いて物にぶつからないよう抱いておく。そして余裕があれば症状をビデオ撮影しておくことが大切である。診断時に大変役立つ。
●特発性癲癇は抗癲癇薬でコントロールできる(発作の頻度や程度を軽減できる)ことが多く、多くの場合寿命にほとんど影響しない。ただし、30分(臨床的には10分)以上続く痙攣は重積といって緊急疾患である。痙攣が普段より長く続く場合は迷わず病院へ行こう。また、緊急時のために座薬などを持っておくことも大切である。

5.その他、膀胱結石僧帽弁閉鎖不全症も多くみられる。

文責:獣医師 棚多 瞳

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