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ペット豆知識No.70-雄猫の尿道閉塞-MRT「ペット・ラジオ診察室」4月29日放送分

●まず猫の下部尿路疾患(FLUTD=Feline lower urinary tract disease)について述べる。本邦でのFLUTDは来院猫の4~10%を占め、アメリカでは1~6%である。
●FLUTDの内訳は、猫特発性膀胱炎(Feline idiopathic cystitis)が55~69%で最も多く、次いで結石が13~28%、その他尿路感染や解剖学的異常、行動上の問題、新生物などがある。(以上、Textbook of Veterinary Internal Medicine, 6th edition, pp1828-1830から引用)
●FLUTDが雄猫で発生した場合、尿道閉塞(Urethral obstruction、略して「尿閉」)を惹起し易い。雌猫では尿道が太くて短いために尿閉を起し難い。
●尿閉の原因物質は60%が尿道栓子(Urethral plugs)30%が不明結石(Uroliths)のみが10%細菌性尿路感染を伴う結石が2%、その他として尿道狭窄や腫瘍(新生物)がある。原因物質が不明というのは、尿閉を解除する際に閉塞物質を膀胱内に逆送させることにより、原因物質の確認が不能となること等による。
尿道栓子は、炎症で膀胱や尿道から脱落した細胞や赤血球、白血球、結晶、粘液などが固まって形成されたものである。これは指先で揉むことによって容易に変形することがある。症例ではカテーテルを使用する前に、ペニスを外側から指でマッサージするだけで、尿閉を解除できる場合がある
結石成分ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)が主で、時にシュウ酸カルシウムもある。
●尿閉は緊急疾患である。病態は腎後性の急性腎不全を呈し、最も致命的な異常は高K血症である。カリウム値が6.5mEq/L以上であれば、心停止の可能性が増す。
●治療は、即座に尿閉の解除処置を行う。不可能であれば膀胱穿刺して、尿の生成を促す。同時に血液検査を実施して、カリウム値が6.5mEq/L以上であればインスリンを点滴投与する。この時、低血糖を回避するため、ブドウ糖液の投与も併用する。
●尿閉はマニュアル通りの治療を慎重に実践すれば100%救命可能な疾患である。頻尿や血尿が見られたり、特にトイレに何回も行くが尿が出なければ本症を疑い、直ぐに病院へ行くことが重要である。
●予防法は、尿石形成予防用フードの給餌や環境(給水・運動・肥満)に留意する。肥満は運動不足を招き、運動量の低下は飲水量の減少となる。飲水量の減少は尿結石形成と膀胱炎のリスクを高める。

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