<今日のニャンコ>
11歳の去勢済み♂の「チョコ」ちゃん。多飲、嘔吐、食欲廃絶、それに最近急に痩せてきたという主訴で来院。来院時の体重は11.16kg。最も重かった時は約14kgもあり、前回の来院時は13kgであった。血液検査では肝酵素の上昇と血糖値が367mg/dlと上昇しており、糖尿病が疑われた。輸液や強肝剤などの投与を数日行ったが改善されず、現在はインスリン製剤を投与しながら、回復した食欲を無視して、ダイエット作戦中である。
●糖尿病には、インスリン依存性であるⅠ型糖尿病とインスリン非依存性のⅡ型糖尿病があり、犬は殆どがⅠ型であり、猫ではその80%がⅡ型である。※犬では膵臓のβ細胞の破壊と損失が急速なため、糖尿病と診断された時点では既に遅い。
●猫に多いⅡ型糖尿病は肥満や運動不足、ストレスなどの環境因子によってインスリンに対する抵抗性が高まっている。そのため、病期が初めの頃であればそれらの環境因子を改善することで、インスリン投与を回避できることがある。
●猫での糖尿病に対する肥満のリスクは3.9倍とされる。また、平均体重から1.9kg過体重になるとインスリン感受性が50%以下となる。もともと♂猫は♀猫に比べインスリン感受性が低い。95%が5歳以上で70~80%が去勢♂である。
<今日のテーマ>は「動物で使われる消毒薬の種類と特徴」についてである。
●表にヒトで使用されている一般的な消毒薬の分類と主な消毒部位を示した。使途は多少異なる点も有るが、多くは犬猫でも同様な目的で使用される。
●図には消毒薬の抗微生物スペクトルを示した。犬猫の場合の酵母とは「マラセチア」が対象となる症例が多い。糸状菌はMicrosporum Canisが問題となる。
●アルコール製剤の殺菌力は濃度依存性ではないので、消毒用として一般に市販されている濃度で使用する。抗菌生物活性は、グラム陽性・陰性菌、酵母、糸状菌、真菌に有効である。芽胞菌のうちバチラス属には無効であるが、クロストリジウム属には効果がある。またHIV、HBV、HCVを含むウイルス一般にも有効である。作用機序は、菌体蛋白質の凝固変性、溶菌、代謝阻害により数秒の短時間で殺菌効果を呈する。
●ポピドンヨードは、水に不溶のヨウ素をポリビニルピロリドンに架橋結合させて水溶性とした製剤である。一般細菌、真菌、ウイルスにまで広い抗微生物スペクトルをもつ速効性の生体消毒薬である。作用機序は、遊離ヨウ素による細胞毒性さようである。ヨウ素過敏症や甲状腺機能に異常のある症例には使用できない。
●クロルヘキシジンは一般細菌類、カンジダに有効であるが、結核菌、ウイルス、芽胞菌には無効である。作用機序は、細菌の酵素阻害や細胞膜の変性・損傷である。アナフィラキシーショックの副作用があり、高濃度での粘膜での適用は避ける。※以上の記述は辻本豪三・小池勝夫 編(2009年、医学書院)「薬理学」pp385~387をほぼ転写。
●次亜塩素酸ナトリウムの作用機序は細胞壁や生体膜の損傷、酵素活性の失活などによる。
まだ、つづく・・・・・今日はこれまで。