<今日のニャンコ>
新富町からやってきた2歳の雄の日本猫。昨年の12月中旬より、腎臓が悪くて加療中とのこと。1月31日の時点では、正常で2mg/dl以下のクレアチニン値が5.6mg/dl、同じく30mg/dl以下が111.6mg/dlと上昇し、尿毒症に近い腎不全状態を呈していた。レントゲン撮影では左の尿管に6mm大の結石と腎臓(腎盂)に5~6mm大の結石が3個、それより小さい結石が4~5個存在。右にも左側より少ないが尿管結石と腎結石を認めた。本症例は尿管結石により尿管が狭窄し、腎機能をより低下させており、かつ尿管結石が原因した腹痛はかなり重度と判断し、手術を実施した。開腹すると、右側尿管尿石の触値知が可能で、尿管切開を行うと、結石と炎症に随伴したと考えられる尿管の完全な閉塞を確認し、かつ二次性の水腎症が見られた。これより、無機能性の水腎症と判断し右側腎臓を摘出した。左腎臓では腎門から2cmの尿管に結石を認め、同部位の尿管を切開して摘出後、鉗子とカテーテルのフラッシュ(強い水圧であ腎盂を洗浄する)で腎盂内の結石を可能な限り除去した。術後のレントゲン所見では9割以上の結石を除去できた。腎機能値も術後4日でクレアチニンが2.9mg/dlまで、尿素窒素が50.6mg/dlまで低下し、食欲もあり経過良好である。
<今日のテーマ>:猫の腎結石
●雄に多く、年齢分布が1-3歳と11-13歳の二峰性。(犬は中年-高齢)
●シャムに多いとされるがそうとも限らない。
●症状:臨床徴候は見られないことも多いが、腹痛や食欲不振、沈鬱、血尿、頻尿、多飲多尿(PU/PD)、排尿困難、嘔吐、体重減少など。
●特徴的な症状は腹痛で、それに伴う食欲不振、沈鬱など。
●診断
①血液検査での腎機能値の上昇。
②超音波検査での腎盂や尿管の拡張。腎盂内の結石。
③レントゲン撮影で最終確認。
●腎結石症は膀胱結石症に比べて発生が少なく、判明している尿路結石の約1~4%であるとの報告もあるが、膀胱結石に比べて発見しにくいため、実際にはもっと多い可能性が高い。
●猫の腎結石の種類(成分)は圧倒的にシュウ酸カルシウムが多い。(犬ではシュウ酸カルシウムが約40%、ストラバイトが約33%、尿酸が約12%。)
●治療
①手術が必要な場合は尿管結石が存在する場合や片方の腎臓が無機能性の水腎症に陥っている症例。
②腎結石のみのケースでは手術は考えない方が良いであろう。
③成功したとしても再発率が高い。
④もちろん、腎臓の機能が低下している症例では尚更手術はしない。
⑤そうでないケースでは輸液や食餌療法などの内科療法で経過を観察する。
⑥結石の形成(生成)を抑えるフードを与えることが重要である。
●尿管結石は腹痛が酷く、かつ尿管閉塞を惹起し、急性腎不全や水腎症を招くため、輸液や利尿剤で尿管結石が膀胱に流れないのであれば、腎機能が低下している症例でも迷わず手術を実施すべきである。実際、輸液や利尿剤の投与でも膀胱内へ流れ込まない症例が多い。
●まとめ(予防)
①水分を十分に摂るようにする。
②若齢でも腎結石が見られる為、猫では1歳からも健康診断をし、かつレントゲン撮影を実施すべきである。
③猫では尿石症ももっぱら多発することから、フードは、はじめから尿石症用にする。