今回は「誤嚥性肺炎」について述べる。
誤嚥性肺炎は吸引性肺炎とも言われ、唾液、食物、胃液などを口腔内常在菌と共に気管支内に吸引して起こる肺炎である。
●胃酸の吸引により上皮細胞が損傷し、細菌が侵入しやすくなる。胃液に含まれる細菌の総量は少なく、酸(あるいはその他の刺激物)にさらされることにより、二次感染を生じやすくなるのである。また、損傷により上皮細胞間の神経終末がさらされることで気管支が収縮する。
●炎症や感染の結果、粘液産生量が増加し、気道閉塞となり呼吸しづらくなる。
●損傷が重度の場合には、肺胞毛細血管の透過性が増し、非心臓性肺水腫となり急性促迫症候群となる。
●症状
・多くのケースで咳、喘鳴、呼吸音が小さいといった症状が認められる。
・頻呼吸や発熱は半分以下のケースでしか認められない。
●治療方法と予後
・抗生物質や気管支拡張薬などの投与、酸素吸入、ネブライザーといった治療法があるが、重症の場合には治療の甲斐なく亡くなるケースもめずらしくない。
・生存率は75%以上である。
・その重症度は吸引量、pH、細菌、微粒子の容積や大きさなどに影響を受ける。
・レントゲンでの重症度と生存率は関係しない。
●やはり予防が大切である。誤嚥性肺炎に注意が必要な場合を以下に示す。
・全身麻酔
麻酔の覚醒時に嘔吐する場合は多く、吐物を誤嚥してしまう。全身麻酔を行う前は、すくなくとも12時間の絶食が必須となる。また、事前にH2受容体拮抗薬を投与することで胃液のpHを上げ、肺への損傷を少なくすることができる。
・発作
・昏睡
・嘔吐
・逆流(巨大食道症、食道憩室など)
・強制給餌
・その他、喉頭麻痺、喉頭の手術、重症筋無力症、第Ⅴ脳神経障害などがあげられる。
※誤嚥性肺炎は猫よりも犬に多い。
※上記に当てはまる場合には、フードを少量ずつ何回にも分けて与える、食事の形態を考えるといった工夫も必要となる。
※嘔吐が認められる場合、嘔吐の最中に大きな声をあげることで驚いて誤嚥してしまうケースもある。
文責:棚多 瞳