犬・猫の高齢化で、以前は未避妊犬の約6割が罹患すると考えられていた子宮蓄膿症であるが、今では9割にまで増加している。
●子宮内腔に化膿性物質の貯留。
●雌猫より雌犬が一般的。
●(春期)発情期後の各年齢(9歳以降でより一般的)。
●遺伝や好発品種は明らかではない。
●危険因子は年齢、エストロゲンや女性ホルモンによる治療、発情周期の不整、卵巣疾患。
●関連病状および疾患:敗血症・敗血症性ショック・全身性炎症反応症候群・多発性器官機能不全症候群・播種性血管内凝固・急性腎不全・急性肝損傷。
●病型:
1.開放性子宮蓄膿症(類粘液や化膿性の外陰部排泄物。時に血液を含む)。
2.閉塞性(非開放性)子宮蓄膿症(外陰部からの排泄物なし)。
●病歴・主訴:
1.発情間期(発情終了から数週間後に発症)。
2.食欲不振・嘔吐・元気消退・沈うつ・多尿・多飲・膣排泄物・卵巣子宮摘出手術の失敗・以前に行った流産誘発治療・出産後。
以上は、クリニカル ベテリナリ― アドバイザー(長谷川篤彦 監訳)、pp436-438参照。
●診断:
1.発熱、食欲不振などあるが、決め手は①避妊手術をしていない、②腹部エコー検査で膨満した子宮と子宮内腔貯留物の確認、③外陰部からの排泄物(排膿)、④膣鏡による膣内視による排泄物の確認、⑤腹部触診による肥大した子宮の確認、⑥腹部レントゲン撮影による肥大した子宮の確認、⑦腹部圧痛など。
●治療:
1.内科的治療:繁殖犬や心臓病、高齢などの理由で手術を避けたい(子宮を温存させたい)か手術がハイリスクで実施出来ない場合。抗生剤(多剤併用)や子宮収縮剤など。
2.一般的には、手術によって卵巣と子宮を摘出(通常の避妊手術である卵巣子宮摘出術)する。
●手術のポイント:
1.1割程度に子宮が破裂(裂壊)して腹膜炎を併発している。限局性の腹膜炎と広汎性腹膜炎がある。
2.広汎性腹膜炎の場合には、大網の切除も行う。いずれにしても大量のラクトリンゲル液による丹念な腹腔洗浄が必須である。
3.より早く、より確実に!!! 子宮頸管の縫合・処置が肝腎!!!
4.血小板が顕著に減少しているケースでは、特に止血に留意し確実に!!!
5.ハイリスクの症例では事前に昇圧剤や蘇生剤などを準備しておく!!!
6.重症例の術後は、敗血症や腹膜炎を考慮して抗生剤の多剤併用を!!!
●まとめ
1.9割のリスクから、小型・中型犬では10歳以下では避妊手術を推奨!!! 手術のコストも通常の避妊手術の2~3倍である。
2.未避妊の犬では、飼い主は常に本症を念頭に入れて、体調の変化に留意する必要がある!!!
3.食欲が低下したり、発熱がある場合、また特に外陰部(膣)からの何らかの排泄物が見られたら、本症を疑い病院へ!!!
※※不断の避妊手術は、手術の基本であり、あらゆる手術のトレーニングと理解し、常に正確で速く、丁寧に!!!