●今日のワンコは、8歳の去勢雄のミニチュアダックスで血尿を主訴として来院。尿道カテーテルで膀胱から小さな結石と泥状のブツを採取。成分分析で98%のケイ酸(シリカ)と判明。患犬は都城市山田町から来院しており、シラス台地の土にはこのケイ酸が多量に含有されている。患犬は土を良く食べるとのことであった。鹿児島では本症が多いことが分かったいる。地下水を汲み上げて飲む井戸水にも要注意である。注意しましょう。
○尿道結石は、通常、雄の病気であるが、まれに雌でも起り得る。これは、膀胱から尿道への出口(膀胱三角)付近の粘膜に結石が食い込んだ状態が生じて閉塞になる。
○雄犬ではペニスに陰茎骨が存在するため、その脇を通過する尿道は拡張が制限される状況にある。
○したがって、雄犬の場合には陰茎骨の端、すなわち陰茎骨の膀胱側(近位)で結石が詰まるケースが多い。かなりの大きさで有れば、それよりも膀胱側で閉塞する。
○手術法は2つに大別される。
○1つは、尿道カテーテルで尿道内の結石を膀胱まで逆走させた後、膀胱切開して摘出する。
○他の方法は、膀胱切開を実施せず、会陰部あるいは陰嚢部位の尿道を切開して結石を摘出し、その部位に新たに尿道を造設する。
○特に陰嚢を利用して新しい尿道口を造設する方法は、会陰部に比べて皮膚の収縮度合が小さく尿道口が閉鎖することが無い。しかし、尿道の損傷が著しい場合には会陰部を選択せざるを得ない。
○結石の種類によっては、特にリン酸アンモニウムカルシウム(ストラバイト)の場合は処方食により結石を溶解可能なケースも少なくないため、手術を実施する前に食餌療法を試みる価値あり。シュウ酸カルシウムは予防のフードはあるが絶対ではなく、再度結石ができるケースも少なくない。
○過去に1度もしくは複数回の膀胱切開の手術を実施した場合で、術後にも新たに結石が生じたケースでは、再度の膀胱切開はせずに、陰嚢部での尿道設置術の選択を考慮する。
○特にシュウ酸カルシウムなど完全な予防が不可能で、かつ1回~2回の膀胱切開の手術をしているような症例では、陰嚢部位での尿路造設術を施す方が賢明であるかもしれない。その理由は、陰嚢部に新たな尿道口を設置すれば、尿道に結石が閉塞することは極めて少なくなる。それまで陰茎骨の近位で閉塞していた結石はこの新たな尿道口より排泄されるからである。
○膀胱切開術のリスクを高める高齢の症例や、心臓病や腎機能低下などの合併症が存在する場合には、手術時間や侵襲の少ない陰嚢部での尿路造設術を選択すべきであろう。
○手術が叶わない場合には、尿道閉塞を繰り返す度に尿道カテーテルで結石を膀胱内に逆走させるしかない。