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今週の症例(2014年2月21日)No.33:手術をしないに越したことはない!

[症例]:8歳、雌のチワワ、3.0㎏。
[主訴]:1時間前に自分で転倒し右後肢跛行。
[診断]:来院時も右後肢は挙上し負重不可。レントゲン検査にて右股関節脱臼と診断。軽度股関節形成不全もあるが、非観血的に整復できる可能性があると判断し、全身麻酔下で整復と外固定を実施。8日目に外固定を外す。本症例は非常に温厚な性格な為、再脱臼することなく維持できたと思われる。

[ワンポイント講義]
①通常、大腿頭は寛骨臼から背側に脱臼変位する。大腿骨頭の円靭帯は常に完全に断裂する。まれに後腹側脱臼がみられる。股関節形成不全を伴う犬(多くは大型犬)は、些細な外傷や外圧に続発して脱臼を起こす危険性がある。
②股関節周囲の軟部組織に対する持続的な影響と関節軟骨の変性を防ぐために、できるだけ早期(できれば1日以内)に脱臼を整復すべきである。
③股関節脱臼整復の選択肢は、a.非観血的整復、b.観血的整復(外科的処置)、c.大腿骨頭および骨頸切除術がある。非観血的整復は脱臼後48時間以内で関節構造が正常な場合に限定される。ただし非観血的整復で回復させることができる可能性は約50%、股関節形成不全あるいは以前に受けた外傷などにより股関節の形態に異常がみられる症例では成功率は低下する。非観血的整復に失敗した後の外科的処置の成功率と最初から外科的処置を実施した場合の成功率は同等である。そのため非観血的整復が第一選択肢になる。通常は5日間寛骨臼内に大腿骨骨頭が保持されていれば成功。その後は犬なりのリハビリで回復する。(当院での本法による治癒成功率はおよそ3分の2である。)
④非観的整復が困難な場合、あるいは一度不成功の場合で、股関節の再脱臼を危惧する時には、観血的整復もしくは大腿骨頸切除術を実施する。大腿骨頭切除術を実施した症例の紹介はこちらhttp://tabaru.9syu.net/case/perm/272.htm
従来、「診断即手術」という時代があった。以前は手術したほうがベターであった疾患もそうでないほうが良いという見解が、最近の人医療でも少なくない。何でもかんでも手術がベストではないことを承知すべきである

文責:獣医師 藤﨑 由香

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