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10月31日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「遺伝の話」です。

(藤崎):今日は遺伝についてお話します。犬も猫も人も、染色体を細胞の核内にもっており、この染色体に多くの形質を発現する遺伝子が組み込まれています。まずこの染色体数が動物種によって異なります。X染色体、Y染色体など聞いたことがありませんか?

(戸高アナ):聞いたことがあります。XXだとメス、XYだとオスですよね…?

(藤崎):そうです!人の染色体数は46本でこのうち女性、男性を決定する性染色体が2本含まれています。犬では染色体数が78本、猫では染色体数が38本と動物種によって異なります。例えば雄犬では染色体のうち同じ形をした一組の染色体が合計38組で76本とX染色体とY染色体がひとつずつということになります。犬の染色体の数はオオカミも同じ78本のため犬の祖先と考えられています。

(戸高アナ):では、この染色体の中にある遺伝子にさまざまな遺伝情報がはいっているのですね?

(藤崎):まさにその通りです。特に犬は体重が80㎏にもなるセントバーナードもわずか2㎏にも満たないチワワも同じ犬です。こういった品種は人間が長い年月の間にその用途、目的に合わせて品種が作られてきました。

(戸高アナ):品種を作るというと?

(藤崎):新しい品種、つまり新しい資質を備えた系統をつくるため、雑種から純粋種に変化させていきます。異なる品種の犬を交配すると産まれた子犬は雑種です。しかしその中に両親の優れた特徴を兼ね備えた子犬が産まれることがあります。この両親の優れた特徴を兼ね備えた子犬を選び、似たもの同志を交配します。このように何世代も繰り返すことでその系統の特徴が遺伝的に固定されると新しい品種になります。雑種も何世代もその特徴を受け継ぐもの同志を交配していくと新しい純粋種になるということになります。現在犬は700~800もの犬種があるとされていますが、JKCジャパンケンネルクラブでは国際畜犬連盟により公認された343犬種中190犬種を登録しています。(2013年3月現在)。一方猫ではTICA(The International Cat Association)は55種を認定しています。(2013)

(戸高アナ):では毛色も遺伝で決まるのですよね??

(藤崎):毛色は1つの遺伝子によって決定されるのではなく、複数の遺伝子が相互的に働き色が発現するため複雑ですが、基本は中学校の理科で習う『メンデルの法則』です。1865年グレゴール・ヨハン・メンデルによって発見された法則で優性の法則、分離の法則、独立の法則の3つの法則から成りますが、背の高いエンドウと背の低いエンドウを掛け合わせるとすべて背の高いエンドウができました。できた背の高いエンドウ同士を掛け合わせると背の高いエンドウと背の低いエンドウが3:1の割り合いでできた…というものです。

(戸高アナ):親とは違う毛色の子犬が産まれていたり、子猫同士で全然毛色が違ったり…というのはこういった理由なのですね。

(藤崎):こうして交配を重ねた結果、現在のようにさまざまな品種ができていますが、望ましい遺伝子だけでなく望ましくない遺伝子も遺伝的に固定される場合があります。いわゆる遺伝病とよばれるものですが、犬の遺伝病の代表的なものにはPRA進行性網膜委縮症という網膜が変性し委縮することで視力が低下し、最終的には失明してしまう病気があります。生後すぐにみられる早発型ではコリー、Mシュナウザーに多く、2-7歳で発症する遅発型では圧倒的にMダックスに多く、トイプードルなど他の犬種でもみられることがあります。

(戸高アナ):いいところばかりが遺伝するというわけにはいかないのですね。では遺伝病をなくすことは可能ですか?

(藤崎):遺伝する病気を避けるにはその個体を交配に用いなければいいのですが、そう簡単にはいきません。病気の遺伝子を保有するすべての子が発症するわけではなく、遺伝子を保有しながら生涯発症しない場合も少なくありません。また、毛色によって交配させてはいけない毛色の組み合わせがあったりと繁殖を考える場合にはある程度知識が必要になります。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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