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1月9日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「犬の認知機能不全」でした。

(藤崎):今日は犬の高齢性認知機能不全についてお話します。

(戸高アナ):高齢性認知機能不全というと人でいう「認知症」ですか?

(藤崎):そうですね。ヒトでいう認知症は後天的な脳の器質的異常によりいったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態をいい、血管性認知症、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病のひとつともされるレビー小体型認知症など詳しく分類されています。犬の高齢性認知機能不全も神経変性疾患で、進行性の認知機能の低下を特徴としますが、ヒトのように詳しい原因は未だに研究段階ですが、ヒトと同じように分類することはどうやらできないようです。

(戸高アナ):環境やフード、獣医療の進歩で犬猫の寿命が延びているという話が以前有りましたが、寿命が延びるということは認知症といった問題も起きてくるわけですね。ヒトと同じですね。症状はどういった症状が認められるのでしょうか?

(藤崎):認められる症状としては活動性の低下、呼びかけへの反応の低下、周囲の出来事に対する関心の低下、食欲の異常、咬傷事故、不適切な排泄などさまざまな問題行動が認められます。そして一番問題になるのが昼夜逆転、夜鳴き、徘徊です。

(戸高アナ):ご近所に迷惑もかける夜鳴きは本当に困りますね。

(藤崎):そうなんです。日本犬で認知機能不全が多く認められることや、日本では最期まで看取る風習が強いため、介護している飼い主さんに一番よく相談されるのがこの夜鳴きです。しかし、なかなか有効な方法がないのが現状です。

(戸高アナ):犬種によって認知機能不全は発症に違いがあるのですね。

(藤崎):すべての犬種で認知機能不全を発症する可能性はありますが、圧倒的に柴犬など日本犬やその雑種で多く認められます。

(戸高アナ):何歳ごろから症状はでるのでしょうか?

(藤崎):認知機能不全は約11歳ごろから認められ始める症例が多いですが、6-8歳から脳の器質的な変化は起き始めているという報告もあって、飼い主や獣医師が異常と認識できる随分前から脳の変化は起き始めている可能性があります。また、犬の11歳というと犬種にもよりますが日本犬の中型犬というとヒトでは約70~80歳ごとから認められ始めるということになります。

(戸高アナ):症状が認められた場合、治療はできるのですか?

(藤崎):原因がはっきりしていないことからも、治療がなかなか難しいのが現状です。しかし、中には有効だったというような報告も認められることからヒトのアルツハイマーの治療薬やパーキンソン病の治療薬を犬に使用する場合もあります。また、夜鳴きがどうしようもない場合には御近所にも迷惑がかかってしまうということでやむを得ず鎮静作用のあるお薬を使用するような場合もあります。しかし、薬物療法だけではなく、環境の改善や行動療法で問題行動を軽減できる場合もあります。徘徊に対しては家具などの配置に気をつけたり、ぶつかっても大丈夫なように保護する、外で飼っている場合には脱走したり、迷子になってしまうケースもあるので注意が必要です。昼夜逆転や夜鳴きに対して、なるべく昼間は起こして夜に寝せるようにする、家族とのコミュニケーションなどで軽減することもあります。今までは口にしなかったような物まで口にしてしまうような症例もいますので、届くところに置かないというのは鉄則ですね。
また、SNSでは介護している人たち同士のコミュニティも数多く存在するので、介護で疲れきってしまわないように交流したり、アドバイスをもらったりと活用してみるのもいいかもしれません。

(戸高アナ):なかなか難しいですね。では予防することはできますか?

(藤崎):はっきりとした効果が分かっているわけではありませんが、日頃から家族とのコミュニケーションや他の人や犬とのふれあいなど刺激が犬でも有効なのではないでしょうか。次回は猫の認知機能不全についてお話します。

文責:獣医師 藤﨑 由香

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