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2015年12月18日(金)のMRTラジオ「ドクター・ヒデのワンニャン譚」は「痛みについて-その2-最近の鎮痛剤事情」でした。

(福留)前回痛みの発生と鎮痛のメカニズムを中心にお話させていただきましたが、今回は最近使われる鎮痛剤にはどのようなものがあるのかを紹介したいと思います。

(戸髙アナ)鎮痛剤にはいろいろな種類があると思いますが、以前とすると変わってきたのでしょうか?

(福留)今、内科療法として使われる鎮痛剤は、主にオピオイド、ステロイド剤、非ステロイド剤があります。今も昔も鎮痛剤のメインとなるのはオピオイドで、代表的なものにモルヒネがあります。前回すこし触れましたが、モルヒネは脊髄や大脳のオピオイド受容体に結合することで痛みの伝達を抑制し、強力な鎮痛効果を発揮します。ただし、麻薬指定されているため保管や管理に厳しい条件が付けられており、取扱いが煩雑となっています。麻薬指定ではないオピオイドとしてブトルファノールやブプレノルフィンがありますが、モルヒネと比べるとどちらも鎮痛効果は軽度と言われています。そこで最近になってトラマドールという鎮痛剤が注目されるようになりました。

(戸髙アナ)聞いたことのないお薬ですが、どのようなお薬なのでしょうか?

(福留)トラマドールは、これまでの注射薬に加え2010年には内服薬として日本の人医療で発売され、2013年には「慢性疼痛における鎮痛」として適応範囲を広げました。最近では犬におけるトラマドールの研究が進み、獣医療でも積極的に取り入れられようとしています。モルヒネと同じオピオイド受容体に作用するため十分な鎮痛効果が得られ、人ではモルヒネに耐性を示す患者にも鎮痛効果を発揮するようです。また、呼吸抑制や循環抑制も少なく麻酔中にも取り入れやすくなっています。

(戸髙アナ)普段、私たちが薬局で買える鎮痛剤もありますよね?

(福留)薬局で取り扱われる鎮痛剤はアスピリンやイブプロフェンなど聞いたことがあると思いますが、これは非ステロイド剤に分類されます。前回お話しましたが、非ステロイド剤はシクロオキシゲナーゼという合成酵素を阻害しプロスタグランジンなどの痛み物質の産生を抑制することで鎮痛効果を発揮します。※注

(戸髙アナ)ステロイド剤とステロイドではない非ステロイド剤では、どのような違いがあるのですか?

(福留)ステロイド剤は神経疾患などで消炎鎮痛作用を発揮しますが、肝臓障害、易感染性から感染を誘起しやすいなど非ステロイド剤に比べると副作用があるため、定期的な検診のもと投与していく必要があります。一方の非ステロイドも、胃潰瘍が誘発されたり、出血傾向になるという副作用があり、外傷や消化器の異常がある場合は使用しにくかったのですが、最近ではそれらの副作用が軽減された薬剤が開発されています。

(戸髙アナ)お薬というのは、もちろんいい面がありますが、副作用にも注意して服用する必要があるのですね。

(福留)これまで鎮痛剤の種類と主な副作用についてお話しましたが、動物の病態や損傷部位、手術部位や程度の違い、服用期間などを考慮して副作用を最小限にしつつ薬剤を有効に活用することが重要です。最近では、動物の生活の質を落とさないように躊躇せず鎮痛剤を取り入れるべきだという考えが獣医療でも主流になってきています。

(戸髙アナ)私たち飼い主としては、どのようなことに気を付けておくといいですか?

(福留)動物は痛みを感じる時、じっとしたり、泣きわめいたり、背中を丸めたりといつもとは違う様々な痛みのサインを出しているはずです。飼い主さんは、まず自分のペットの病状を正確に把握し、言葉の話せない動物からの痛みのサインをいち早く見つけてあげることが重要であるかと思います。

※注:犬猫への解熱鎮痛剤は一般的に、人の容量(体重当)よりも少なくて効果を発揮する場合があります。特に猫では解毒機序が人と異なり少量で中毒や死を招くことがありますので、人体薬の使用は絶対に避けて下さい

文責:獣医師 福留 希慧

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