人医での腎臓病専門家は従来の残存腎機能のステージ分類を修正しながら現在に至っているようです。腎臓機能の残存がGFR(糸球体濾過量)の残存率に他ならないのは昔から変わっていません。
たとえば、正常または高値(GFR≧90)、正常または経度低下(90>GFR≧60)、軽度~中等度低下(60>GFR≧45)、中等度~高度低下(45>GFR≧30)、高度低下(30>GFR≧15)、末期腎不全(15>GFR)と云う具合に6段階にステージ化しています。要は、ステージ分類をどの程度まで細分化する必要があるのかは別として、臨床上、いつから治療を開始すべきなのか、腎不全の原因を含めてどのような病態にどのような薬物を使用すべきなのか・・・・・・ということです。
犬猫の腎不全の原因や慢性化の要因については、残念ながら不明点が少なくありません。ヒトではその原因の多くに自己免疫が関与しており、高血圧や糖尿病などの進展因子の関与も明らかにされています。
猫に関してのステージングについては、IRIS(Internal Renal Interest Society)が提示している、ステージ1(血清クレアチニン値が<1.6mg/dl、GFR100~33%)、ステージ2(同1.6~2.8、33~25)、ステージ3(同2.9~5.0、25~10)、ステージ4(同>5.0、<10)の分類が主流になりつうあるようです。 その他、補助的な腎機能ステージ分類として、尿中タンパク/血清クレアチニン(UP/C)があり、正常が<0.2、境界が0.2~0.4、タンパク尿が0.4<・・・・・・と云う具合です。 また収縮期血圧の指標では、スコア0が150mmmHg>、スコア1が150~159、スコア2が160~179、スコア3が180≦・・・・・・です。もちろんどの指標でも数値が上がれば腎不全へ進行します。
ステージの分類はさて置いて、最大の関心事は残存する腎機能をどのようにして調べれば良いかです。残存の腎機能の減少(GFR低下)は慢性腎不全への移行を意味します。慢性腎不全は糸球体が硬化(腎臓の萎縮)することであり、硬化した糸球体は再生不能です。
クラシカルな方法は、単位時間当たりの尿を集め、血液中と尿中のクレアチニン値を測定さえすれば計算式で算出できます。クレアチニンは体内で産生され、そのほとんどが尿中排泄されるために利用されてきました。ヒトでの採尿は簡単ですが、犬猫では容易ではありません。これは腎疾患の病態や治療を考えるにあたり、相当のネックであり、現在もそうです。
前出のフォルテコールや4月発売の「経口プロスタサイクリン(PGI2)製剤 ラプロス」の適応はIRIS分類のステージ2と3とされます。
そこで再度、猫のIRIS(Internal Renal Interest Society)の分類を確認します。ステージ1(血清クレアチニン値が<1.6mg/dl、GFR100~33%)、ステージ2(同1.6~2.8、33~25)、ステージ3(同2.9~5.0、25~10)、ステージ4(同>5.0、<10)の4段階分類です。
クレアチニン値が1.6~5.0mg/dl、GFRが33%以下ならば投薬を考え始めるということになります。くどいようですが、残念ながら、血液中のクレアチニン値だけでGFR値を知ることはできません。
しかし、ある程度の年齢以上、例えば5歳以上の定期健康診断でのクレアチニン値の推移を数か月、あるいは1年単位でプロットすると、加齢に伴ってその多くの例でクレアチニン値の上昇が見られます。このことは、GFRが33~25%まで、言い換えれば血液中クレアチニン値が正常から境界(ボーダー)~異常値に上昇したことを大まかに推測できるということです。
獣医療の高度化で、極端な話になりますが、犬猫の寿命は治療不能な疾患で終えます。具体的には悪性腫瘍(癌)、難治性心臓病、それに腎不全の3大病です。そのうちの腎不全だけでも早期の治療開始により、その寿命が1年でも2年でも延命できれば、画期的薬品と云うことになります。
開発・販売会社に対して更なる情報の提供を望むものです。