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レプトスピラ症に注意!

レプトスピラ症の犬(宮崎市内で飼われている犬)が来院しました。
レプトスピラ症は人獣共通感染症で、衛生環境向上や犬のレプトスピラワクチン普及により、人も犬もその罹患数はかなり減少しましたが、現在も時折発生しています。国内の人での感染が2019年で32例報告されています。

※素足で農作業をしていた時代(~昭和)、田畑の野良仕事で人の足や腕の傷からレプトスピラ菌が侵入して発症していました。また、台風の影響で溝(どぶ)が埋まり、住処を失った鼠が地表に現れ、保菌のレプトスピラ菌を排泄し、それに接触した人が罹患した報告もあります。さらには、レプトスピラ症で入院した犬の世話で獣医師が感染した事例もあります。
※つい最近までは、猟犬が野山の鼠の尿から感染し、その感染した猟犬の排尿によってレプトスピラ菌が巷に撒き散らされ、ペットの犬に伝染することも珍しくありませんでした。

病原体
スピロヘータ目レプトスピラ科のグラム陰性細菌で、250以上の血清型に分類されます。病原性レプトスピラは保菌動物(げっ歯類など野生動物)の腎臓に保菌され、尿中に排菌されます。人や動物が保菌動物の尿や尿で汚染された水や土と接触する際に、皮膚の傷から感染します。汚染された水を飲水することによる経口感染の報告もあります。レプトスピラ菌は、無症候犬の尿からも排泄されます。さらにはレプトスピラ症の治癒した犬からも一定期間、尿からの病原体の排泄が認められます。
感染経路は、主にレプトスピラ菌に汚染された水や土壌を介した経皮感染です

症状
犬:黄疸、元気食欲低下、発熱、嘔吐など
  重症では腎不全や出血傾向
  ※症状を示さない不顕性感染もあるが発症すると致死率が高い
人:風邪のような症状を示す軽症型から黄疸、出血、腎障害を伴う重症型(ワイル病)まで多彩な症状を示す

診断
・病原体の分離
レプトスピラ専用の培地に検体を入れ、培養する。培養後暗視野顕微鏡でレプトスピラを観察する。しかし、増えるまでに時間がかかる。
・PCR検査
レプトスピラの遺伝子を検出する。
・MAT法(顕微鏡下凝集試験)
診断と血清型の判別に有効。ワクチン接種による抗体も検出してしまうためペア血清を用いた検査(1週間程度間隔をあけて2回検査する)を行う必要がある。
彼の野口英世がウイルス感染症の黄熱病をワイル病と誤認したように、光学顕微鏡によるレプトスピラ菌の検出は極めて困難です。現在では、PCR検査が主流のようです。感染の初期は血液での、その後は尿のPCR検査で診断されます。本症例では、血液と尿を採取し、はじめの血液のPCR検査で陽性となりました。光学顕微鏡によるウイルスの検出は不可能です。レプトスピラ菌が光学顕微鏡で容易に検出できれるのであれば、野口英世が黄熱病とワイル病を間違えることはなかったでしょう。当時、電子顕微鏡は存在していません。

 最近、人気のキャンプなど水辺のレジャーに愛犬を連れて行くという方も多いのではないでしょうか? 野外(散歩を含む)に犬を連れ出すことは、レプトスピラ症感染のリスクを高めます。レプトスピラ症は決して過去の病気ではありません。
犬のレプトスピラ症はワクチン接種で予防できる病気ですが、ワクチンの種類によってはレプトスピラが含まれていないものもあります。また、レプトスピラ症のワクチンの効果は1年未満で、年1回の追加接種が必要です。愛犬のワクチン接種歴を確認しましょう!

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